将来は1箱千円も 医療政策の観点を 「経済ウオッチ」たばこ税
政府税制調査会は、たばこ税の引き上げを検討している。手っ取り早い歳入確保策として浮上してきたようだが、健康増進のための医療政策としての観点から検討されるべきだ。将来的には1箱(20本入り)千円もあり得るのではないか。
たばこや酒類などの嗜好(しこう)品は、歳入不足のたびに課税強化され、穴埋め財源として重宝されてきた。生活必需品ではないため正面切って反対しにくい面もある。
今回は、鳩山由紀夫首相が健康への悪影響を踏まえた見直しの検討を政府税調に指示している。結果的に増税になるとしても、その過程では予算の帳尻合わせばかりではなく、医療政策としての効果を審議してほしい。
たばこが値上げされたら、禁煙する人も出てくるだろう。やめられない人も本数を減らすなどの対策を迫られる。こうした影響から税収はむしろ減るかもしれないが、医療費はその分、減るのではないだろうか。
わたしは20年以上たばこを吸い続け、国家財政に、いくばくか貢献してきたが、もっと税金を納めてもいいと思っている。だがその使途は医療や介護関連の政策に限定してほしい。基礎医学の研究開発や介護施設の整備、不妊治療への助成などに安定財源として活用できないだろうか。葉タバコ農家への対策も必要なら一時的にそれに充てることもあるだろう。
長妻昭厚生労働相が指摘したように欧州では、たばこは高価だ。昨年まで駐在した英国では1箱約5ポンド。当時は極端なポンド高が進み、円換算で1200円ぐらいの感覚だった。巻紙もいっしょに買い、1本をばらして細い3本に仕立て直して吸ったこともあった。そこまでして吸うかと思われるだろうが、周りがみんなそうしていたので自然に身に付いてしまった。総量としては喫煙量は減っていた。帰国して増えたのは間違いない。
喫煙の功罪についてはここでは触れない。吸い続けることも自己責任だ。国から「たばこをやめなさい」とは言われたくない。しかし、最近ますます肩身が狭い喫煙者にとって、国民の健康増進に貢献しているとの意識は、貴重な一服の味わいを少し変える効用もあるのではないか。
(2009年11月11日 記事提供 共同通信社 )
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