Lesson114


ひと箱1000円だと高い?



禁煙日記 再燃するたばこ税増税議論 記者が体験/和歌山

 たばこ税増税の議論が再燃している。鳩山由紀夫首相や長妻昭厚労相が引き上げに言及。厚生労働省は10年度税制改正要望で増税を求めた。政府税制調査会での議論を経て、増税方針や増税額が決まれば改正案が国会に提案される。

 長妻厚労相が例示した「欧米並みの価格」。同省は06年のまとめでたばこ1箱の値段を、▽イギリス9・37ドル▽カナダ7・26ドル▽フランス6・18ドル。アメリカは州や小売店ごとに異なり、参議院の調査ではニューヨーク市が平均7・83ドル。1ドル90円で換算すると、▽イギリス843・3円▽カナダ653・4円▽フランス556・2円▽ニューヨーク市704・7円だ。

 思い出すのは昨年にぎわった「1箱1000円」の議論。きっかけは、日本財団の笹川陽平会長の新聞紙上での発言だった。欧州との価格差に加え、「分かりやすい」との理由で1000円を提唱すると、各地で1000円が議論された。笹川会長は「1000円なら9割が禁煙するとの研究もあり、とくに青少年のたばこ離れが進む。500円では禁煙につながらない」と大幅値上げにこだわる。

 今回の増税報道をみて、「議論の目安になる価格が安くなったな」と思ったが、あくまで円高傾向を反映したもの。1ドル110円ならイギリスは1030・7円になる。

 日本禁煙学会(作田学理事長)なども「笹川会長の意見にまったく賛成する。先進国で日本だけが遅れている」として来年度税制改正での1箱1000円の実現を求める。たばこの需要減少のため価格・課税政策を求めるたばこ規制枠組み条約の遵守(じゅんしゅ)を訴える。

 ちまたの反応を聞いた。30年前に禁煙した和歌山市の無職の男性(85)は「やめてから健康になった。たばこをやめたい人にはいい機会」と歓迎する。一方、喫煙する同市の自営業、古川哲夫さん(60)は「庶民の楽しみを目の敵にするやり方。諸外国とは消費税なども違い、たばこ税だけ比較するのはおかしい」と反対。だが、「500円になったらやめる」そうだ。「一緒にやめましょう」と励ましてもらった。【加藤明子】

(2009年11月7日 記事提供 毎日新聞社 )