Lesson122


喫煙による、全身的変化の兆候



白血球数が低い喫煙男性、空腹時血糖値が有意に低値
職域健診受診男性を対象とした調査結果を上尾中央総合病院・橋本佳明氏が報告

1月10日の一般演題で上尾中央総合病院(埼玉県上尾市)内科の橋本佳明氏は、1万人近い男性を対象に喫煙と空腹時血糖値の関係を白血球数と関連付けて調査した結果を報告。白血球数が低い喫煙者では非喫煙者に比べ有意に空腹時血糖値が低値だったと解説した。

白血球数4900/μL未満の20本以上喫煙者で空腹時血糖値が有意に低値

 対象は職域健診受診男性9953人。高血圧・脂質異常症・高尿酸血症・糖尿病の薬剤を使用している患者および虚血性心疾患・脳卒中の既往歴がある患者は除外した。生活習慣、薬剤、既往歴に関する情報は自記式アンケート調査によった。

 喫煙状態を非喫煙群、過去喫煙群、少量(1−19本)喫煙群、多量(20本以上)喫煙群に分け、白血球数を比較すると、非喫煙群よりも過去喫煙群の方がわずかではあるが有意に白血球数が高く、また喫煙本数が増えるほど白血球数が有意に高値だった。

 次に橋本氏は喫煙状態と空腹時血糖値の関係について報告。年齢、飲酒量、BMI、運動量による調整では、喫煙状態と空腹時血糖値の関係に差は見られなかったが、さらに調整因子として白血球数を加えたところ、非喫煙群98.2mg/dL、過去喫煙群98.1mg/dL、少量喫煙群96.6mg/dL、多量喫煙群96.0mg/dLであり、少量喫煙群、多量喫煙群で非喫煙群に比べ有意に空腹時血糖値が低いという結果が得られた。

 さらに白血球数を4群(4900/μL未満、4900−5699/μL、5700−6799/μL、6800/μL以上)に分けて同様の解析を行ったところ、4900/μL未満においてのみ多量喫煙群で空腹時血糖値が有意に低値だった。

 本研究では、自記式アンケートをもとにしているため、喫煙情報が不正確な可能性がある。そこで橋本氏は、同時に拡張期血圧と喫煙状態の関係を調査。その結果、喫煙者で拡張期血圧の有意な低値が確認されたことから、「喫煙情報は不正確なものではないと考えられる」と橋本氏は指摘した。

 この結果について、橋本氏は機序は不明としながらタバコ煙に含まれる化学物質の直接作用あるいは喫煙による代謝亢進や食欲抑制などの間接作用などが考えられるとし、「従来の報告では見られなかったデータであり、今後、他のコホートでも調査する必要がある」と述べ、演題を終えた。伊藤 淳(m3.com編集部)

(2010年1月14日 記事提供 m3.com )