厚生労働省が2月25日、たばこの煙による健康被害防止を目的とした通知を都道府県などに出しました。
Q どんな内容なの。
A 非喫煙者が他人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」が健康に悪影響をもたらすとの認識は国内外で年々高まっています。このため厚労省は、飲食店やホテルなど不特定多数の人が利用する公共的な空間を、原則全面禁煙とするよう求める通知を自治体に出し、関係施設への周知徹底を図ることにしたのです。
Q 対象施設は。
A 学校や病院など公共施設のほか、劇場やパチンコ店などの娯楽施設。百貨店などの商業施設や、駅や航空旅客ターミナルといった交通関係機関も含まれています。
Q 背景は。
A 厚労省は2003年にも、健康増進法の施行を受けて具体的な受動喫煙防止策を求める通知を自治体に出しました。ただ分煙でも構わないとの内容だったため、飲食店などで対策が徹底されない状況が続いています。世界保健機関(WHO)が完全禁煙の法制化を各国に求めるなど対応を強化する中、今回の通知には国の姿勢として「全面禁煙」を明確に打ち出す狙いがあるようです。
Q 施設側の反応は。
A 飲食店や旅館の経営者からは「全面禁煙にすると客離れが起きる」との声が出ています。景気低迷が長引く中、禁煙に向けた新たな対応を取ることでさらなる業績悪化を招くことに警戒感を抱く関係者も多いのです。
Q でも守らないと処罰されるのでは。
A いいえ。健康増進法自体に罰則が規定されていないため今回の通知にも強制力はなく、全面禁煙としなくても処分対象とはなりません。厚労省は「まずはできる範囲で対策を進めてほしい」としていますが、それでは実効性に疑問が残るため、一部の専門家らからは「法的措置で罰則を設けるべきだ」との指摘も出ています。
Q 地方自治体の動きはどうですか。
A 神奈川県は昨年、公共的な施設に禁煙や分煙を義務付け、違反者に過料を科す「受動喫煙防止条例」を全国で初めて制定しており、4月施行の予定です。厚労省は職場での禁煙についても対策を進める方針で、労働者の受動喫煙を防ぐよう事業者に義務付ける労働安全衛生法の改正案を、来年の通常国会に提出することを検討しています。
Q 海外の状況は。
A 厚労省によると、英国やカナダ、タイなどは公共的な施設内での喫煙を禁じる法律を既に施行しています。WHOは、各国に禁煙対策に関する取り組みの報告を求めており、受動喫煙防止に向けた世界各国の動きはさらに加速しそうです