Lesson177


さあ、禁煙の秋です。
たばこの値上げは過去最大値


禁煙の秋…たばこ 10月から大幅値上げ

外来受診者3割増し たばこ店「もうたたむ」
 増税の影響で10月1日からたばこ代が大幅に引き上げられる。主な銘柄で1箱100円以上の値上げとなることもあり、販売減を見越して、たばこ店の中には「もう商売を続けられない」と、閉店を決めたところも。

 一方、日本たばこ産業(JT)が値上げ額を発表した今年4月以降は、内科の禁煙外来を訪れる人が増え、ドラッグストアは禁煙グッズの販売コーナーを設け始めた。
 東京都中野区のJR中野駅から歩いて15分の住宅街。大通りに面したたばこ店の女性店主(79)は、「2年前にタスポが導入されて売り上げは4分の1に落ちた。そして今回の値上げ。割に合わないし、近々、店をたたむつもり」。約70年前に義父が始めた店。義父や夫が亡くなった後も、近所の常連に支えられて商売を続けてきた。閉店の決意はまだ、周囲に伝えていない。
 都電荒川線の早稲田駅(新宿区)前でたばこ店を営む黒滝弘さん(77)は、「値上げで売り上げは半分くらいに落ちるだろう。法を守っているのに、まるで毒を売っているような仕打ちだ」と語る。「この年齢でほかの仕事はできない」。約40年前から夫婦で切り盛りしてきたがこの先、商売が成り立つか不安だという。

 政府は昨年12月に1本あたり3・5円のたばこ税増税を決定。販売減を考慮し、JTは今回、値上げ幅を1箱(20本入り)あたり60〜140円と過去最大にした。JTは、禁煙や本数を減らす人が増加する影響で、来月から1年間の販売数量は前年比で25%減ると予測。また、値上げ前の“駆け込み需要”に備え、通常の倍近いたばこを生産している。

   ◎

 「たばこ屋の看板を見ると、ついつい……。でも、禁煙補助剤と同僚の励ましのおかげで、この2日間は何とかゼロで通しています」。専門医の指導や薬の処方が保険で受けられる「禁煙外来」を備えた中央区の「中央内科クリニック」。主治医の村松弘康副院長の問いかけに、会社員の男性(55)が笑顔で答えた。
 男性は約35年前から吸い始め、1日30本、飲酒すると40本を超えた。健康のためにも今回こそは禁煙を成功させようと思っている。
 同クリニックでは、禁煙外来の受診者は毎月100人程度だったが、4月以降は一気に3割増しに。今月は約2週間で150人を超えたという。禁煙治療に詳しい東京農工大の阿部眞弓准教授は「たばこの依存症に悩む多くの人たちにとって、値上げが禁煙に踏み切るきっかけになっているようだ。自由になるお金の少ない大学生らへの影響は特に大きいだろう」と話す。

   ◎

 「たばこ増税迫る さあ今からはじめませんか」。大田区の「ツルハドラッグ梅屋敷店」では先月から、ニコチンガムなど禁煙関連商品を集めたコーナーを設置した。商品を手に取る人が増えているといい、同店では「値上げ直前や実際に値上げされた後は、もっと購入する人が増えるのではないか」と期待している。

(2010年9月15日 提供:読売新聞)