受動喫煙が原因で肺がんや心臓病で死亡する成人は、国内で毎年約6800人に上るとの推計値を厚生労働省研究班が28日、発表した。女性が約4600人と被害が大きく、全体のうち半数以上の約3600人は職場での受動喫煙とみられる。
主任研究者の望月友美子(もちづき・ゆみこ)・国立がん研究センタープロジェクトリーダーは「年間の労災認定死が約千例であることを考えると、甚大な被害だ。行政と事業者は、労働者の健康を守る責任があることを認識すべきだ」と話している。
研究班は、2005年に実施された受動喫煙状況に関する調査を基に、たばこを吸わない成人約7600万人のうち、女性(約4800万人)の約30%と男性(約2800万人)の約6%は家庭で、女性の約20%と男性の約30%は職場でそれぞれ受動喫煙にさらされていると推定(重複あり)。
受動喫煙により、肺がんや虚血性心疾患などの病気になる危険性が1・2〜1・3倍になることが国際機関や同センターの疫学調査により明らかになっており、受動喫煙によって増えるリスクから死者数を推計した。
その結果、肺がんで死亡した女性(年間約1万8千人)の約8%と男性(同約4万9千人)の約1%、虚血性心疾患の女性(同約3万4千人)の約9%と男性(同約4万2千人)の約4%の計約6800人は受動喫煙が原因と判断した。女性が約4600人、男性が約2200人で、このうち職場での受動喫煙は男女とも約1800人。
※受動喫煙
健康増進法では「室内かそれに準ずる環境で、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義。喫煙者がフィルターを通して吸った「主流煙」よりも、たばこの先端から立ち上る「副流煙」に、より多くの有害物質が含まれるとされる。健康被害を防ぐため厚生労働省は2月、飲食店やホテル、百貨店など多くの人が利用する公共的な施設に対し、建物内での全面禁煙実施を求める通知を出した。神奈川県は4月に、全国初となる受動喫煙防止条例を施行した。