体調は気になるけれど、病院へ行って健康診断を受ける時間がない。そんなときに便利なのが自宅にいながら糖尿病やがんなど生活習慣病の危険性を具体的な数値で調べられる検査だ。郵便やインターネットで素早く検査結果が分かるため、日ごろの体調管理にもうってつけ。忙しいビジネスマンや主婦、高齢者など幅広い人たちの健康チェックに役立ちそうだ。

横浜市に住む会社員のＡさん（55）はＩＴ（情報技術）関連企業で働く技術者。仕事が忙しくお酒もほぼ毎日飲むが、最近は体調が気になりだした。ズボンが以前よりきつくなりウエスト増で現在はちょうど８５ｾﾝﾁﾒｰﾄﾙ。血圧も２−３年前より高くなった。高コレステロールや内臓脂肪などが原因で、心筋梗塞（こうそく）リスクが高まる「メタボリックシンドロームになりかけているかも」と思い始めた。
しかし、健診は会社で年１回受けるだけ。頻繁に体調をチェックしたいと昨年秋始めたのがインターネットで健康チェックや相談できるサービス「カラダのみはり番ネット」（http://t-hcs.jp）だ。

利用者はまず、体脂肪率や内臓脂肪レベルが分かる「体バランスチェッカー」と「電子血圧計」「心電図計」の３種類の機器を購入する。血圧などの数値を家庭で測定し、自分のパソコンから専用ホームページに数値を入力し送信する。検査結果が正常かどうか一目でわかるようグラフ化されたデータがその場で分かり、コンピューターが自動解析し注意点などを記したコメントが月１回届く。

Ａさんは週末ごとに利用する。測定や送信にかかる時間は十分程度で「慣れれば面倒ではない」。３カ月に１回、医師が数値をチェックした上で助言するメールも届く。

今の体重増を放置すると病気を招くと指摘されたＡさんは「医師の言葉には従おうという気になった」と１日１万歩以上歩くのを心がけている。別料金だが、心配事を医師にメールで相談できるサービスもある。事業を展開する東芝コンシューママーケティングでは「４０−６０歳の生活習慣病予備軍に照準を当てた。生活が乱れがちな単身赴任者にも有効」と話す。

検査用キットを使って自ら血液などを採取し、その成分を専門会社に調べてもらうサービスも増えている。インターネットやドラッグストアなどでキットを購入でき、自宅で簡単に検査可能だ。

リージャー（東京・中央）は、生活習慣病やがん、肝炎など１０種類以上の検査キットを用意、ニーズに幅広く対応する。１回の検査にかかる費用は５千−９千円程度。例えば生活習慣病なら、採取した血液からγ（ガンマ）−ＧＴＰや総コレステロール、中性脂肪、血糖、尿酸など１２項目で数値を出す。同社の浜口伝博・医療戦略本部長は「一般の健診と調べる項目や精度はほぼ同じ」と言う。

血液採取は１人でできる。専用器具に飛び出し型の針が付いており、それを指先に刺して採血する。数滴あればよく、痛みもわずか。その場で別の器具を使って血漿（しょう）成分を分離する。キットを宅配便で送ると、３日後には検査結果が携帯電話やパソコンにメール送信される。さらに４日後、郵便で詳細な結果を記したシートが届く。検査値に異常がある場合は最寄りの医療機関に相談するよう助言してくれる。

利用者は３０代や、企業の健康保険組合などが多いという。「多忙で健診を受けにくい人だけでなく、会社の健診を受ける機会のない主婦や高齢者層にも便利」（浜口本部長）。病気やその一歩手前が自覚症状がないケースで、数値から異常が見つかることもあるという。

日本メディカル総研は、睡眠時無呼吸症候群の在宅検査を展開する。専用の小型測定器を使って睡眠中に血液中の酸素濃度や心拍数を調べる。同症候群の疑いがあるかどうかが検査入院せずに分かる。

ただ、自宅で簡便に受けられる検査も過信は禁物だ。鷲崎誠・東京地下鉄保健医療センター所長は「あくまで通常の健診を補うものと考えるように。健診維持には定期的に医師と直接向き合うことも大切」と指摘する。

「自宅検査」と会社などで受ける定期健診と併せて利用し、年数回、健康状態をチェックするのがよい。また、血糖値を調べる前には食事をしないなどの注意点は病院で受ける健診と変わらない。会社ごと検査方法も微妙に異なるため、なるべく同じ検査を継続利用した方がよいだろう。
（長谷川章）