煙たがる業界尻目に
被害防止へ世界動く 「大型サイド」広がるたばこ規制
ソウルで12日、たばこ規制枠組み条約の締約国会議が始まった。健康被害の防止を図る規制は各国に広がり、欧米に比べて後れを取っていたロシアも動きだした。煙たがるたばこ産業を尻目に、次々と打ち出される税の引き上げや宣伝排除などの措置。世界保健機関(WHO)は、アフリカでの対応などが今後の課題と指摘する。
▽町一つ消える
「毎年40万人がたばこの影響で死んでいる。大きな町が毎年一つ、地図から消えている(ことと同じだ)」。ロシアのメドベージェフ首相は先月発表した声明で、同国での健康被害の大きさを強調、抜本的なたばこ規制の必要性を訴えた。
ロシアは中国に次ぐ喫煙大国。人口の約3分の1に当たる約4400万人がニコチン依存に陥っている。特に女性の喫煙率がソ連崩壊後約3倍の22%に上昇したことや、喫煙開始年齢が平均11歳にまで下がったことが政府に危機感を抱かせた。
政府は先月、たばこ規制法案を下院に提出。2015年1月から、レストランを含め公共の場所を全面禁煙にすることなどを柱とした。
▽1箱900円
今回、締約国会議が開かれた韓国も、12月から150平方メートル以上の飲食店を原則全面禁煙とし、15年までに全飲食店に段階的に適用を広げる。違反した場合、店と喫煙者双方に過料が科される。
保健福祉省によると、韓国の成人男性の喫煙率は48・3%(10年)と経済協力開発機構(OECD)加盟国でも最高水準。たばこ1箱平均2500ウォン(約180円)という価格の安さが一因として指摘されるが、業界や喫煙者の反発が大きく、価格引き上げの取り組みはなかなか進まない。
一方、たばこ税率が世界でも有数の高さで知られる英国。現在、主要銘柄の小売価格が1箱7・47ポンド(約940円)と、日本の2・3倍に上る。消費税も合わせると価格の78%が税金だ。
英政府は年々たばこ税を引き上げており、価格は1990年と比べ4倍以上となる一方で販売量は半分以下に。喫煙率も90年の30%から2010年には20%に低下した。
▽"代用品"対策も
たばこの箱の包装からロゴなどの宣伝色を一掃する規制を12月から世界で初めて導入するオーストラリアでは、既に新包装のたばこが一部店頭に並び始めている。
世界のたばこ大手は、規制は憲法違反だと法廷で争ったが8月に敗訴。英大手は直後、従来の包装の一部がちぎり取られたように見える挑発的なデザインの商品を発売したが、政府に制度導入後の取り締まり強化を意気込ませる結果となった。
「たばこが健康を害することは確実」とするWHOはこうした規制を歓迎しており、世界の多くの地域では、喫煙率はピークを越え、今後は減少が続くとみている。
一方で「アフリカでは若者の喫煙率が増加しており、今後の課題だ」とも担当者は指摘。さらに「無煙たばこ」や「電子たばこ」といった新開発の"代用品"の「成分に有害物質が含まれている可能性もあり、基準が必要だ」といい、まだ当分対策に終わりが来ることはなさそうだ。(モスクワ、ソウル、ロンドン、シドニー、ジュネーブ共同)