喫煙が健康に悪いのは常識だが、吸い続けると命は何年縮むか。放射線影響研究所(広島市)の坂田律(さかた・りつ)・副主任研究員らのチームは、20歳までに吸い始めた喫煙者の余命は男性8年、女性は10年短縮するとの大規模研究を英医学誌に発表した。
過去の国内の研究では、余命短縮はこの半分程度とされていたが、今回の数字は欧米の研究結果とほぼ同水準になった。
チームは、1950年に広島と長崎で始まった原爆被爆者を含む健康追跡調査の対象者約12万人のうち、喫煙習慣の情報が得られた約6万8千人(男性約2万7千人、女性約4万1千人)を平均23年間追跡した。
分析の中心は20〜45年生まれの人たち。「喫煙者」「禁煙者(過去に喫煙)」「非喫煙者」の3群に分け死亡率などを比較。他の習慣や被ばく線量を考慮した解析も行い、結果は妥当と確認した。
死亡率は20歳までに吸い始めた喫煙者が最も高く、非喫煙者に比べ男性は2・21倍、女性は2・61倍になった。
20歳までに吸い始め、1日平均23本を吸い続けた男性は、70歳時点で72%が生存していた。これに対し、非喫煙者で生存率が同じ72%になるのは78歳。喫煙による余命短縮は8年と推定された。同様に女性は、10年短縮するという結果だった。
だが男女とも35歳未満で禁煙すると、死亡リスクはほとんど上昇せずに済むことが判明。35〜44歳の禁煙でもリスクの多くは避けられるという。
過去の国内研究で、喫煙による余命短縮の影響が小さかった理由についてチームは、より古い世代は喫煙開始年齢が高く、本数も少ない傾向があるため、その影響も考えられるとしている。
国内の最近の喫煙率は男性32・4%、女性9・7%(2011年国民健康・栄養調査)となっている。
※英医学誌は10月25日付英医師会誌
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