Lesson325

たばこ吸いたい」脳の仕組み解明…理研



 「たばこを吸いたい」という欲求は、脳の二つの部位が連携して生じることを、理化学研究所分子イメージング科学研究センター(神戸市)などが突き止め、28日発表した。米科学アカデミー紀要(電子版)に近く掲載される。禁煙や薬物依存の新しい治療法開発などにつながりそうだ。

 たばこを吸う習慣がある旅客機の客室乗務員は、着陸が近付くと、飛行時間と無関係に喫煙の欲求が強まることが知られていたが、こうした現象が、脳のどのような仕組みで起きるのかは不明だった。

 同センターの林拓也・副チームリーダーらは、喫煙者10人に、▽すぐ喫煙できる▽4時間喫煙できない--という条件で他人が喫煙している映像を見せ、吸いたい気持ちの強さを点数化してもらった。さらに脳の活動の様子を、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で画像化して解析した。

 その結果、喫煙の欲求が強まると、こめかみの奥にある「眼窩(がんか)前頭皮質」が活性化。すぐ喫煙できる条件では、左前頭部にある「背外側前頭前野」も活性化したが、この部位に磁気を当てて働きを抑えると、こめかみの奥の活動も下がり、喫煙の欲求が抑えられたという。

 林さんは「左前頭部で『吸えそうだ』という状況判断を行い、こめかみの奥で『吸いたい』という欲求が湧き起こるのだろう。ニコチン依存の強さの評価や、他の薬物依存の研究にも役立つだろう」と話している。


2013年1月29日 提供:読売新聞