メントールたばこ禁止の是非
シリーズ「最近のテーマ」◆Vol.8
「最近のテーマ」は喫煙問題。
米国でメントールたばこを禁止すべきという声明が出た。
国内でも今に至るまで禁煙は関心事。米国の方針の是非は。
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米国で香り付きたばこをめぐって議論が活発だ。極めつけがメントールたばこを禁止すべきという米国心臓協会(AHA)からの声明(『「メントールたばこ禁止を」声明』を参照)。香り付きたばこは、若年者の喫煙への導入を促していると見られている。日本の医師はどう見るか。
賛成 喫煙関連疾患の防止へ
米国の報告では、1日に約1200人がたばこ関連の原因で死亡しているという。そのうち毎日2人ずつ26歳以下が占める割合が増えている。最初にたばこを吸おうというきっかけが、たばこの「香り」と疑う。日本でも喫煙の社会的な負荷は言うまでもなく大きい。国立がん研究センターの2008年の報告によると、わが国の全死因のうち、喫煙関連は男性で27.8%、女性で6.8%。癌のうちで喫煙関連が男性で38.6%、女性で5.2%とやはり多い。
日本でもメントール味を付けたたばこは複数存在している。メントール系のたばこがこの30年間で増加し、若年女性に受け入れられているという報告もある(Int J Environ Res Public Health. 2011;8:1-14.)。有害性が高いのであれば、禁煙はかねて重要施策であり、日本でもメントールたばこの議論を禁止すべきだと考えてもおかしくはないだろう。
反対 一部だけ規制に無理も
そもそも喫煙が日本では合法であり、文化として根付いている。たばこ事業法の第1条で、国はたばこ産業の健全な発展を図るとうたっている。日本たばこ産業(JT)に独占的な販売権を与えて、たばこ税からの税収を得ている。JTの調査によると、2012年の段階でも男性の喫煙率は32.7%、女性は10.4%。世界的には喫煙率が男性で10%程度の国も多く、日本は高い水準にある。喫煙が禁止されていない以上、香りを付けたものばかりを問題視するのは難しいかもしれない。嗜好品として利用が広がっている中で、特定の嗜好性を問題とするのは無理が生じ得る。
日本でメントールが米国同様に有害性が高いかは明確ではない側面もある。米国でさえ、AHAが米国医薬食品局(FDA)に対して、たばこへのメントール添加制限を設けるよう求め情報収集を進めている。根拠を十分に示してはじめて、規制に動くことになる。日本でもメントール系たばこが若年層に受け入れられているとの報告はあるが、香りだけの問題とも言いきれない。やはりたばこの一部分の規制が根本的な解決になるかは明確ではない。