禁・分煙猶予、100平方メートル以下の飲食店も 神奈川、受動喫煙防止条例
◇県が素案に追加
全国初の制定を目指す公共的施設受動喫煙防止条例(仮称)について、松沢成文知事は8日、新たに一定規模以下の飲食店に対する規制の猶予期間を盛り込んだ素案を発表した。県内の飲食店の約7割が対象となり、実際に禁煙・分煙化されるまでには時間がかかることになる。一方、飲食店からは、猶予期間の効果を疑問視する声が相次いだ。
素案は、禁煙・分煙化を3年間猶予する対象に、延べ床面積100平方メートル以下の飲食店を加えた。9月公表の骨子案で対象としたクラブやパチンコ店などに続き、規制への反発が強い飲食店に配慮した形で、県の推計では約2万7000カ所が対象となる見込み。松沢知事は記者会見で「どういう分煙施設にするか相談する時間が必要」と説明した。
また、分煙化にかかる設備投資への支援として、事業者が県の制度融資を利用した場合、県が利子を負担することも今後検討する。
このほか宿泊施設の宴会場は、部屋ごとに喫煙か禁煙を選ぶことで施設全体を分煙とみなす。利用者が限定される会員制の施設は、利用者が受動喫煙を容認すれば、喫煙を認める許可制とする。
罰則については、過料の上限を個人は2万円とした。1回の違反については、各自治体の路上喫煙防止条例で定める2000円程度にする方針で、違反回数が多い場合は増額する。施設管理者の上限は5万円とする。
県は当初、対象施設の全面禁煙を掲げていたが、骨子案で一部施設の分煙容認に転じていた。松沢知事は8日の記者会見で、分煙や猶予期間を設けることによる後退を認めながら、「究極の目標は全面禁煙だが、1歩、2歩でも対策を進めることが必要」と条例制定の意義を強調した。【五味香織】
◇なお反発の声上がる
素案で新たに規制猶予の対象となった飲食店からは、なお反発する声が上がった。
猶予対象に当たる横浜市中区のシガーバー(約35平方メートル)の男性店長(25)は「面積が狭く、分煙は無理」と条例自体に反対する。「売り上げは間違いなく下がる。猶予期間ギリギリまで営業し、規制が始まったら閉店する店が増えるのでは」と懸念する。
一方、同区の居酒屋(約430平方メートル)は猶予対象外だが、男性店長(66)は「どっちみち規制されるなら同じこと」と話す。ただ、分煙化の設備にかかる費用が不安といい「個室を禁煙にすることもできるが、宴会に対応できなくなる」と頭を抱える。
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◆条例素案で定めた施設の区分
【禁煙義務付け】
▽学校▽病院▽百貨店▽劇場▽公共交通機関(新幹線など除く)▽社会福祉施設など
【分煙選択可】
▽飲食店(面積100平方メートル超)▽宿泊施設(宴会場は部屋ごとに選択)▽娯楽施設(ゲームセンター、カラオケボックスなど)▽サービス業施設(クリーニング店、美容院、場外馬券売り場など)
【3年間の導入猶予】
▽飲食店(面積100平方メートル以下、キャバレー、ナイトクラブなど)▽娯楽施設のうちパチンコ店、マージャン店など
【許可を受ければ喫煙可】
▽会員制施設(利用者が限定され、受動喫煙を容認する場合)
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