Lesson93

洒落てない分煙ルーム、全面禁煙なぜしない?



記者が体験:禁煙日記 時代の流れ、新幹線の分煙に専用ルーム /和歌山

昨年末、久しぶりに新幹線に乗って驚いた。東京行きのぞみ144号(全16両)には喫煙車両がない。07年7月から運行するN700系の新型車両だ。

新大阪-東京を2時間36分。「おたばこを吸われるお客様は、喫煙ルームをご利用ください」と車内テロップで繰り返し案内され、見に行った。喫煙ルームは車両間のデッキに6カ所。扉には「開放厳禁」の文字。ボタンを押して開閉する自動ドアで、煙やにおいが外に漏れにくい。

腰の高さの台に灰を落とす個所が三つ。立ち食いそばの感覚で、横に並んで吸うらしい。目の前は窓になっていて、流れる風景を見ていると飽きない。

「JRもなかなかしゃれたことするね」。東京都渋谷区でレストランを経営する石田俊彦さん(57)は笑う。仕事で「たばこ問題」はいつも頭痛の種。店内は分煙だが、店の奥で揺れる煙を見てきびすを返す人もいれば、「食事を忘れて話に熱中し、何本も続けざまに吸う方もいる」という。自身は食事中は吸わず、新幹線は禁煙車両に乗るのが常だ。

東海道・山陽新幹線はJR東海・西日本が共同運行。JR西は、N700系以降の新型車両はすべて禁煙ルームを設置し、喫煙車両をなくす考えだ。500系の改修時にも設置を進める。

JR北海道・東日本は全面禁煙派だが、JR西は分煙派。JR西広報部は「東京-博多間は乗車時間が5時間以上になる。吸う、吸わない双方のお客様に満足していただき、受動喫煙の完全防止を追求している」。

一方、昨年10月、大阪環状線とゆめ咲線計22駅のホームを全面禁煙化した。ホームの端などに喫煙コーナーを置いていたが、風で煙が流れ、苦情があったからだ。「社会の変化にも対応しなければならない」という側面もある。

新幹線の喫煙ルームで居合わせた、大阪市で会社を経営する女性(32)は「時代の流れだけど、こういうのはいかにも、追い込まれている感じがして大嫌い」と言い放った。
【加藤明子】


(2009年1月10日 記事提供 毎日新聞社)