医学関連書籍紹介

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タバコは動脈硬化を進展させる最大の危険因子である。
タバコのニコチンはカテコールアミンを介して血流を速めるとともに血液粘度を高め、そのずり応力の変化が動脈内皮の障害を引き起こし、さらに血小板粘着・凝集能を亢進させる。
高コレステロール血症があると、タバコの害はいっそう増幅される。
動脈硬化で発症する腹部大動脈瘤が喫煙者では非喫煙者の三倍という高い頻度でみられ、禁煙が腹部大動脈瘤の一次予防法であるともいわれている。
また、タバコは周りの人にも迷惑をかけ、他人が出すタバコの煙は本人が吸っているのと同じ影響を与える。
『血管の病気』田辺達三著(NTT東日本札幌病院長)


自分が喫煙者でもないのに、まわりで喫っているため喫煙の障害を受けることが大きな問題となってきています。
家庭や職場で常時受動喫煙となっている人では、虚血性心疾患の発症が91%ときどき受動喫煙する人では58%増加すると報告されています。
このように受動喫煙により、タバコを喫わない人たちまでが虚血性心疾患にかかりやすくなるということが医学的にも影響が証明されたと報道されています。(毎日新聞1998.1.15)
間接喫煙に週に20時間ていどさらされる人も、周囲で禁煙が徹底している人とくらべると、動脈硬化進行の度合は平均20%高かったといわれています。
呼吸器の問題についても受動喫煙の有害性については多くの報告があります。
『肺の話』木田厚瑞著(東京都老人医療センター呼吸器科部長)


パーキンソン病自体には影響しませんが、喫煙には他の害があります。
肺癌、心筋梗塞、脳卒中などが起きやすくなりますので、喫煙はやめたほうがよいと思います。
『パーキンソン病』水野美邦著(順天堂大学神経内科主任教授)


これまでは、喫煙によっては直接血圧値は影響されないとされてきたが、実際には喫煙後、短時間ではあるが昇圧が認められる。
したがって、へビースモーカーでは血圧上昇が持続することになる。
また、喫煙は高血圧の有無に関係なく心臓・血管疾患の独立した危険因子であり、喫煙の習慣を継続したままで降圧療法を実施しても、心臓・血管疾患の十分な予防効果は期待できない。
このため、高血圧症をはじめとして虚血性心疾患や脳血管疾患の予防には禁煙は不可欠である。

喫煙習慣と冠動脈疾患の発症率との間には強い相関が認められているが、葉巻、パイプタバコに比べて、紙巻きタバコでその影響が最も強い。
冠動脈疾患の発症率・死亡率は、非喫煙者に比べて、紙巻きタバコ1日に20本の喫煙者では約2倍、20本を超える喫煙者では3倍となり、明らかに喫煙本数に比例してそのリスクは増大する。
また、禁煙により冠動脈疾患の発症率が明らかに低下することも証明されている。
わが国における喫煙者は、男性では20〜50歳代で50パーセントを超え、女性では20歳代で20パーセント弱、30歳代で10パーセントを示している。
さらに、日に20本以上の男性喫煙者が全体の70パーセント以上を占める。
とくに、40歳代の男性では20本以上が84.6パーセントにも達し、40本以上も19.3パーセントみられる(『国民栄養の現状』平成10年国民栄養調査結果、厚生省保健医療局)。
喫煙が心臓に障害を及ぼす原因としては、ニコチンと一酸化炭素があげられる。
ニコチンは交感神経を興奮させ、カテコールアミンというホルモンの分泌を促す。
このホルモンは血管を収縮させ、血圧を上昇させているわけであり、これが刺激となって動脈硬化が促進されるのである。
一方、タバコを吸うと、高濃度の一酸化炭素を同時に吸い込んでいることにもなる。
一酸化炭素は、血管中のヘモグロビンとかたく結合し、酸素が全身の組織に運搬されていくのを妨害する。
これは一酸化炭素が、酸素の200倍以上もヘモグロビンと結びつく力が強く、しかも離れにくいので、酸素の運び屋であるヘモグロビンが減り、全身的な酸素不足が生じるからである。
喫煙者の体の中は、いわば慢性の一酸化炭素中毒の状態になっているわけであり、これが全身の酸素欠乏状態を引き起こし、動脈硬化を早めているのである。
しかも喫煙によりHDLコレステロールが低下し、LDLコレステロールが変性を受けるので、さらに動脈硬化が促進されるのである。
また、喫煙が血管内で血液を固まりやすくすることも明らかになった。
血液が血管内で固まりやすいことは、血管内の血流が遅くなり、詰まりやすい状態であり、これはとりもなおさず狭心症や心筋梗塞の発生母体となる。
さらに、喫煙は冠動脈の一部を縮ませて(攣縮させて)、血流を低下させたり途絶させたりすることもある。
喫煙による冠動脈の攣縮が原因となって冠動脈に血栓を形成させたり、狭心症(冠攣縮性狭心症)や心筋梗塞を引き起こすこともある。
そのほか、喫煙によって、体内に動脈硬化を促進させるフリーラジカルが増加することが注目されてきた。
フリーラジカルとは、不安定で反応性の高い原子や分子のことをいうが、最も身近なものとしては活性酸素がある。
私たちは呼吸をすることで空気中から酸素を取り込み、それで食べ物を体内で燃焼させて、エネルギーを作っている。
体内で使われた酸素は、最終的には水に還元されるが、その際、少量の活性酸素が発生する。
体内には活性酸素の毒消し役であるSOD(抗酸化酵素)などが存在しているので、活性酸素が過剰に増えないように調節されている。
だが、活性酸素が過剰に発生すると、これらの毒消しだけでは十分ではなく、動脈硬化などさまざまな危険因子となって作用する。
血液中に増えたフリーラジカルは、血管の内皮細胞を傷つける。
そして、その傷口から血液中を流れているLDLコレステロールが入り込み、すでに述べられたようなメカニズムで、一連の動脈硬化形成のプロセスが進行していく。
また、血管内皮細胞で作られるNO(一酸化窒素)には、フリーラジカルを抑える抗酸化作用、血管を拡張する作用、血液を凝固しにくくする作用など血管機能を保全する働きがあるが、過剰なフリーラジカルにより血管内皮が障害を受けると、NOの働きが抑制されてしまうこととなり、このことも動脈硬化を促進させることになる。
このようにタバコは、あの手この手を使って心臓にゆすりをかけている暴力団のようなものである。
本当に心臓が愛しければ、思い切ってタバコとは縁を切るべきである。
『日本人の心臓』石川恭三著(杏林大学教授)