豆知識

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『喫煙はアルツハイマー病の予防になるか?』
あの調査は家族性アルツハイマー病のデータです。
家族性アルツハイマーはアルツハイマー病のうち2〜3%程度の遺伝病(特定の遺伝子による疾病)です、
また、アルツハイマー病自体が日本の痴呆症患者のうち男性12%、女性25%程度でしかない。
そのデータから日本の痴呆症全体のうち家族性アルツハイマー病の占める割合を推計しても0.370%〜0.555%程度にしかなりません。
要するにしっかりした疫学調査を行うには症例等のデータが少なすぎる病なのです。
そのうえ
1、調査自体が疫学調査のなかでも信憑性の低い横断調査の手法が用いられている。
2、煙草会社から研究費が出ていて研究機関の公平性・中立性に欠けている。
3、疫学調査で支持を得ることが望ましいとされる、基礎医学、実験科学からの支持も得られていない。
と不備が多い。
この手の遺伝病はデータが少ない上に、この調査自体に不備が多く、信憑性は極めて低いという訳です。
百歩譲ってニコチンが家族性アルツハイマー病の予防に効果があったと仮定しても、日本人の痴呆の男性46%、女性40%を占める脳血管性痴呆の危険因子となる煙草が痴呆の予防によい訳がない。
まあ、日本では一時期『あたかも全ての痴呆に効果があるように』誇張して報じられたので、もともと煙草に有益性があると思い込みたい方々が盲信するのはわかりますけどね。
なお、『煙草有害説』は数々の疫学調査により広範なデータが集められており、基礎医学・実験科学の支持も得られていることを明記しておきます。
(しっかりとした手法により調査された疫学調査の結果は、客観的事実として厳粛に受け止めるべきであるし、いい加減な論拠で否定すべきではない。) 
それとパーキンソン病についても、未だ原因不明の奇病とされていますが、最近ある化学物質(MTPT)が原因として発症する症状との関連性から原因物質の特定が研究されています。
で、この病に喫煙が有効かどうかですが、残念なことに『よい効果は得られない。』とされています。
また、滅多に発症しない病気の不確定な予防法として、より危険頻度の高い病の危険因子たる喫煙を行うのは本末転倒といったところでしょう。

(参考文献)
『アルツハイマー病』黒田洋一郎著(東京都神経科学総合研究所参事研究員)
『パーキンソン病』水野美邦著(順天堂大学神経内科主任教授)
『肺の話』木田厚瑞著(東京都老人医療センター呼吸器科部長)
『毒の科学Q&A』水谷民雄著(京都府立大人間環境学部教授)
『生活習慣病を防ぐ』香川靖雄著(女子栄養大学副学長)


煙草一本の主流煙に含まれる代表的な有害物質は、
『タール相』
ベンゾピレン  8〜50ng
ベンゾアントラセン 8〜80ng
カテコール 40〜460mg
β-ナフチルアミン 0〜25ng
ニッケル化合物 10〜600ng
砒素化合物 1〜25mg
ニコチン 0.1〜2mg
『ガス相』
ジメチルニトロソアミン 1〜200ng
ヒドラジン 24〜43ng
ベンゼン 20〜50mg
塩化ビニル 1〜16ng
ホルムアルデヒド 20〜90mg
一酸化炭素 2〜20mg
(参考文献 厚生省『喫煙と健康』1993)
となっています。
なお、他の書籍でもほぼ同様の数値が記述されています。
砒素化合物の急性致死量は書籍により記述に多少差がありますが、少ないもので70〜180mg多いもので100〜300mgとなっています。
また、急性死はしないものの体内に砒素化合物が蓄積することとなる摂取量の目安は、一日3mg程度といわれています。
砒素化合物が慢性的に体内に蓄積した場合、脱毛や臓器肥大により腹部が膨らむ等の症状が現れ、やがて臓器不全や発癌を引き起こし死に至ります。
ベンゼンや塩化ビニル等についても低温焼却した場合、ダイオキシン類(ちなみにダイオキシンはベンゼンと塩素が結合したもの)が発生することは最近の報道等でよく知られていると思いますが、やはりこれも体内に蓄積します。
ご存知のとおりダイオキシン類は内分泌攪乱物質であり様々な疾病を引き起こすとともに、発癌や遺伝子異常を引き起こします。
ベトナム戦争の枯葉剤等も同じダイオキシン類ですが、二重胎児などの奇形の発生はこの遺伝子異常を引き起こすダイオキシン類の作用が原因です。
環境汚染が深刻な現代において有害化学物質を完全に避けて生活することは不可能でしょう。
しかし、有害化学物質の余分な摂取は余分な蓄積となり、余分なリスクとなるのですから、わざわざ摂取しなくて済むもの、避けられるものまで摂取する必要はないし、他人の道楽で摂取させられるべきものではありません。