うつやアレルギーって頑固な気質の人がなる?
頑固とわがままは紙表裏一体と思う?


「新型うつ」への取り組み 香山リカのココロの万華鏡
マスコミで話題の「新型うつ」。

症状が場面や状況によって変動し、仕事となると落ち込みやめまい、動悸(どうき)が激しくなるが、プライベートではけっこう元気。こんなちょっと変則的なうつ病が増えているのだ。病気休職中にリハビリを名目に旅行やレジャーに出かけるケースもあり、会社としてはどう対処してよいのか、と私もしばしば管理職の人から相談されることがある。

本人としても、決して意図的にそうしているわけではなく、「早く復職しなければいけない」という気持ちは当然ある。

しかし、もともと完璧(かんぺき)主義の人や他人の評価を気にする人がこうなる場合が多い。このため、「復帰するなら完全に元気になってから」とハードルを上げすぎるのだ。「最初は補助的な仕事からでいいんですよ」と言っても、「それでは自分が許せない」と言う。同僚や部下たちにそんな姿を見せるのもいやなのだろう。

また、これは良い傾向なのだが、「心の病は誰でもなるもの」とうつ病に対する理解が急速に広まりつつある。今や「うつ病」という診断書を会社に提出するのは、特殊なことではなくなった。その結果、「新型うつ」の人たちは、「うつ病が完全によくなり、休む以前の自分になってから戻りたい」と休職期間が長引きがちになってしまうのだ。

もちろん、うつ病なのだから、基本は休養と服薬。まずは症状を改善させ、気持ちを安定させることが大切だ。とはいえ、ある程度、回復が進んだら、まずは社会生活に戻ることを視野に入れたリハビリをするべきだろう。会社で事務的な仕事をしている人が、「リハビリなんです」といきなりサーフィンをしに海外に長期で出かけるのは、本人のためにも会社でその人の分までがんばる同僚のためにもプラスにはならない。

かつて、私はそんな患者さんに言ったことがある。「オーストラリアでサーフィン。それは楽しそう。でも、それはあなたの場合、刺激が強すぎて復職のリハビリにはならないかも。あなたの分、がんばっている同僚もどう思うでしょう。まずは復職して、それから休暇を取って行ったほうがずっと楽しめると思いますが」

その人は、がっかりした顔をして「先生もわかってくれないんですね」と言い、その後、病院を代えてしまった。「新型うつ」の人を傷つけずに励まし、仕事や家庭にソフトランディングしてもらうにはどうすればよいのか。今年はこの問題に本腰を入れて取り組みたいと思っている。

 

2009.1.20 記事提供 毎日新聞社