政府の原子力災害対策本部は16日、福島第1原発周辺の警戒区域、計画的避難区域の外にあるものの、局地的に放射線量が高い「ホットスポット」を「特定避難勧奨地点」に指定し、避難を希望する住民を支援すると発表した。事故後1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される地点が対象で、住居単位で指定する。
同日、原子力安全委員会(班目春樹(まだらめ・はるき)委員長)に報告、了承された。
これまでの国などの調査では、福島県伊達市霊山町と南相馬市原町区の一部で20ミリシーベルトを超えると推定される地点が見つかっており、政府は当面の対象候補としている。
対策本部はこれらの地域について「一律に避難を求めるほどの危険性はない」とする一方で、「(ホットスポットに長時間とどまるなど)生活形態によっては20ミリシーベルトを超える可能性も否定できない」と説明。特に妊婦や子どものいる世帯には避難を促すよう自治体側と調整するとしている。
指定の手順は、まず文部科学省が詳細な放射線量を調査。年間20ミリシーベルトを超えると推定された場合、放射性物質の除染が可能かどうかを検討する。除染が困難と判断されれば、自治体と相談した上で勧奨地点に指定。放射線の影響について個別に情報を提供し、避難しようとする人に避難先の紹介などを行う。
指定に向けた調査は伊達、南相馬の両市で既に始まっており、今後は自治体と相談しながら調査地点を増やす。
政府はこれまでに、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある地域を計画的避難区域に指定。だが避難区域外でも局地的に空間放射線量の高いホットスポットがあることが分かり、対応を検討していた。
※ホットスポット
周辺に比べて局地的に数値が高い領域のこと。周辺より温度が高い場所という意味でそう呼ばれる。原発事故では、放出された放射性物質が周囲と比べて高濃度に降下、蓄積し、高い空間放射線量が検出される地点のことを指す。事故で陸地や海に放出された放射性物質は同心円状に均等に広がるのではなく、風や海流の向き、地形、土壌の性質などの影響により偏りができる。
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