放射線の健康被害は、遅ければ数十年後になってがんなどの病気をもたらすことがある。ビキニ水爆実験で被ばくしたある漁船では、日本人平均を大きく上回る5割超が、がんで亡くなり、晩発性障害の影響を指摘する声も上がる。
放射線障害は、多量の放射線を浴びた直後に影響が出る「急性障害」と、低線量でも時間がたってからがんや白血病をもたらす「晩発性障害」とがある。
がんは日本人の死因の約3割。被ばく者ががんで死亡したからといって直ちに放射線の影響とは断定できない。しかし、市民団体「高知県太平洋核実験被災支援センター」によると、マグロ漁船「第5海福丸」の元船員を追跡調査した結果、11人が死亡し、うち6人ががんだった。
別の漁船2隻についても18人の死亡を確認し、少なくとも8人ががんで亡くなっていた。生存者の中にも、がんの手術を受けた人がいる。
追跡調査を分析した沢田昭二(さわだ・しょうじ)・名古屋大名誉教授(理論物理学)は報告書で「統計精度が悪いことを考慮しても深刻な被ばくをしていたと推定される」と指摘。同センターの山下正寿(やました・まさとし)事務局長は「30年近く船員を調査してきたが、がんの罹患(りかん)率は異常で被ばくによる晩発性障害は明らかだ」と話している。
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