日野原医師が特別講演
「いわて健康塾特別講演会」が14日、盛岡市のホテルメトロポリタン盛岡ニューウイングで開かれた。今年100歳を迎える現役医師の日野原重明・聖路加国際病院理事長が、「『100歳は次のスタートライン』-音楽のある人生と健康である幸せ」と題して講演。
東日本大震災からの復興について「被災してあきらめるのではなく、自分が運命をデザインする心構えを持って」と呼びかけた。長生きするための秘訣(ひけつ)や音楽療法も披露。約900人の聴衆は熱心に聞き入った。
講演で日野原さんはまず、自身が5月に行った被災地の宮城県南三陸町について説明した。屋上まで逃げられなかった病院の患者やスタッフが多数死亡した状況を語った。病院入り口に表示されていた過去の津波が到達した高さについて、「こうした情報があったために、安心してしまったのでは」と指摘した。
その一方、普代村の和村幸得元村長(故人)が、津波の脅威を予見して巨大堤防を作ってほしいと国に掛け合い、高さ15メートルを超える防潮堤・水門を完成させた例を紹介。「普代村は今回、津波の人的被害を最小限にとどめた。リーダーシップのもとに自治体が団結すれば、今後どんなことがあっても大丈夫」と話した。
また、「被災は運命だった」とあきらめてしまう人がいることを挙げ、「決められた運命があると考えないようにしてほしい」と呼びかけた。友人や先輩、師などとの新しい出会いによって環境は変わり、環境によって人生も変わる。「同じ人と1時間後に同じ話で再び盛り上がるのではなく、例えばこの講演会で知り合った人と新しい環境を作ればいい」とした。
自分が運命をデザインするという心構えで何事にも臨み、それを行動に移すことが必要だと説いた。逆境でも、ヨットのように逆風を利用しながら舵(かじ)を切り、いずれはゴールに達することができるとして、どんな状況でも勇気を持って生き、行動する大切さを強調した。
そして「再建」についての概念を説明。「苦しいときに再建しようという気持ちを持つこと自体、すでに再建が始まっている。岩手の人は今回の受難から、ポジティブに展開してほしい。国民全体が日本の大きな問題として考え、どの国にも負けないような立派な、命を愛する平和な国にしたい」と述べた。
このほか、日野原さんは、長生きするためには、何を食べてどのように運動し、どう働き休むか、作戦を立てなければいけないとした。
心の癒やしには音楽療法を勧めた。音楽は言葉で伝わらない感情も伝えられるコミュニケーション。実際に緊張緩和や鎮静や睡眠のほか、士気を高めたり怒りや不安を解消したりする効果もあるという。
講演後、日野原さんは「岩手はとても素直な人が多いと感じた。楽しそうに聞いてもらえて本当によかった」と笑顔で会場を後にした。