東京電力福島第1原発事故による、周辺住民の健康への影響を検討している世界保健機関(WHO)の報告書素案が25日判明した。福島県浪江町と飯舘村の乳児が将来、がんや白血病などを発症する危険性が上昇するとのデータも得られたが、実際の発症数が統計学的にみて有意に増加する可能性は、乳児以外の子どもや大人を含めて低いとした。
素案が基にした被ばく線量推計は、付近住民が事故後4カ月間現地に住み続け、地元産の食品のみを食べたと仮定。ほとんどの住民は避難しており「線量は過大評価だ」との指摘もある。専門家の一人は「将来の危険性は大きめに見積もってあるととらえるべきだ」としている。
こうした指摘に対しWHOは「過小評価は避けなければならない」として、悪い条件が重なったケースを想定したと説明。実際の発症例はもっと少ないとの見方を示した上で、このような危険性評価も「子どもの健康状態を監視する上で有益な情報になる」としている。12月にも最終報告をまとめる。
素案では、WHOの別のチームによる住民の被ばく線量推計を基に、事故当時1歳と10歳、20歳の男女で、生涯と事故後15年間で乳がんや大腸がんなどの固形がんや甲状腺がん、白血病を発症する危険性を予測した。
危険性が顕著に増したのは、浪江町、飯舘村の1歳女児で、すべてのがんについて生涯での発症危険性が上昇した。1歳男児も白血病の危険性が増した。1歳女児が16歳までに甲状腺がんになる可能性は、同地域に加え、葛尾村や福島、南相馬両市などでも高まった。