東京電力が福島第1原発で事故後に働いた作業員約2万人の被ばく線量の記録を、全国の原発作業員のデータを集約する公益財団法人「放射線影響協会」(放影協)に提出していないことが28日、分かった。データの一元管理システムから漏れることで、被ばく限度を超えて働く作業員が出る恐れがある。
同原発では昨年、作業員が線量計を鉛カバーで覆っていた問題が発覚し、東電の被ばく管理の不備が指摘されている。
被ばく線量は、個人が持つ放射線管理手帳に記入するほか、電力会社が放影協にデータを提出し、必要に応じて照会できるようになっている。ただデータ提出は法令に基づく仕組みではない。
東電は事故前まで、毎年度末までのデータを翌年度5月ごろに提出していたが、2011年3月11日以降の記録が未提出になっている。
放影協によると、11年6月ごろに東電から「津波の影響でコンピューターが被害を受け、データが取り出せない」として、10年度分の提出が遅れると連絡があった。
その後も再三提出を求め、昨年ようやく事故前までの線量データが提出されたが、雇用主などの情報は記載されておらず、放影協は追加を要請した。放影協は「管理手帳はあるが、被ばく管理がおろそかになる恐れがある」としている。
厚労省によると、東電が事故後、新たな積算線量計を導入するまでの約半年間は、免震重要棟にいる時やバスでの移動中の線量が不明で、同省は線量を早く確定させるよう東電に指導していた。
東電は「被ばく管理はしており線量データはあるが、精査に時間がかかっている」と説明。事故後から11年度末までの分は、今年3月末までに提出できる見通しという。
※原発作業員の被ばく管理
原発で働く作業員の被ばく線量の上限は通常、5年間で100ミリシーベルトかつ年間50ミリシーベルトで、事故などの緊急時は年間100ミリシーベルトを限度とする。国は東京電力福島第1原発事故後、年間250ミリシーベルトに引き上げたが2011年12月、通常時の限度に戻した。被ばく線量は、作業員が持つ放射線管理手帳に記載されるほか、放射線影響協会で一元管理。協会は事業者からの照会などに対応し、照会件数は多い年で約10万件に上る。