「我々は、いずれ枯れてしまうようなエネルギー資源に、我々の今後の繁栄や安全保障を委ねることはできない。我々のエネルギーの将来を安定させるためのことを、実現するべき時期にさしかかっている」(米大統領のObama氏)。
米大統領のObama氏は、2011年3月30日に米Georgetown Universityで演説し、米国のエネルギー政策に大きな転換が必要であるとの認識を示した。演説では、こうしたエネルギー政策の転換を目指し、「Blueprint for an Secure Energy Future」と呼ぶ企画書をまとめたことに言及した。同企画書では、米国が現在輸入している1日当たり1100万バレルの石油を、「今後約10年で」(Obama氏)その1/3を減らすという。このために、代替エネルギーや新たな化石エネルギーの資源を確保するほか、エネルギー利用効率を高めるための取り組みを支援すると、企画書で提案している。
企画書では、Obama氏が既に示していた、米国市場で2015年までに100万台の電気自動車(EV)を走らせる計画や、2035年までに米国内の発電の80%に再生可能エネルギーを採用する「Clean Energy Standard」(クリーンエネルギー標準)を設立する、などの目標を盛り込んだ。さらに企画書では、Obama政権が提案している米連邦政府の2012年度予算の項目を強調している。2010年度予算に比較すると、2012度予算ではエネルギー効率関連の技術開発を支援する金額を2倍に高めているほか、再生可能エネルギー関連の技術開発の金額を70%まで拡大するという。
2012年度予算に関連する例では、エネルギー分野の革新的な技術開発を支援する米エネルギー省(DOE)の関連機関であるAdvanced Research Projects Agency-Energy(ARPA-E)の予算を、6億5000万米ドルに設定したことが挙げられる。ARPA-Eへの予算は、2009年2月の「米国再生・再投資法(ARRA:American Recovery and Reinvestment Act)」の際には4億米ドルであり、2億5000万米ドル増額した格好だ。蓄電やスマートグリッド、レア・アース関連の技術開発に注力する「Energy Innovation Hub」と呼ぶ施設も、新たに3拠点開設するという。
演説では、現在の米連邦政府が抱える膨大な赤字を鑑みると、クリーンエネルギー関連の技術開発に予算を与えるのは難しい環境であると指摘している。Obama氏は、共和党議員の活動に触れ、「クリーンエネルギー関連の新技術の研究開発への投資を削減したい人たちもいる」と指摘した。こうしたクリーンエネルギーへの逆風に対して、「クリーンエネルギーの研究開発への投資を犠牲するならば、石油への依存度はますます高くなってしまう」(同氏)という。クリーンエネルギーの研究開発予算の財源を確保するため、2012度予算では、化石燃料の製造支援のために計上した460億米ドルの租税補助金を削除する方針だ。ただし、この方針に対して、化石燃料を支援する立場である共和党が賛同するかどうかは不明である。
「原子力発電は依然として重要」との認識示す
Obama氏は演説で、日本の福島第一原発事故についても言及した。同氏は、原子力発電は現在の米国の発電量の1/5を提供しており、温室効果ガスを発生しないことから、依然として重要であるとの認識を示した。さらに、米Nuclear Regulatory Commission(米国原子力規制委員会)に対し、米国の原子力発電所の安全性を調査するように命令した。米国では、日本の原発事故から多くのことを学び、次世代の原子力発電の建設に生かしたいとしている。Obama氏は、「(原子力発電を)単に選択肢から除くことはできない」と述べた。
■変更履歴
記事掲載当初,タイトルにおいて「石油の輸入を1/3に減らす」としていたのは「石油輸入量の1/3を減らす」の誤りでした。それに伴う本文内容も変更しました。また,本文中で「米国が現在輸入している1日当たり110万バレルの石油」としていたのは「米国が現在輸入している1日当たり1100万バレルの石油」の誤りでした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。
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