膵臓の酵素抑制作用を解明 急性膵炎治療に光

膵臓の酵素抑制作用を解明 急性膵炎治療に光、長崎大
 
 長崎大医歯薬学総合研究科の松山俊文(まつやま・としふみ)教授(分子生物学)らの研究グループは11日、膵臓(すいぞう)から分泌され、急性膵炎(すいえん)の原因にもなる消化酵素「トリプシン」が、免疫機能に関わる遺伝子「IRF2」によって抑制される仕組みを解明したと明らかにした。

 松山教授によると世界初の成果で、急性膵炎の治療法確立につながる可能性がある。成果をまとめた論文は、10月31日付の米国科学アカデミー紀要電子版に掲載された。

 トリプシンにはタンパク質を分解する作用があり、膵臓自体の組織を分解し始めると急性膵炎となる。

 松山教授によると、IRF2の機能に着目し、この遺伝子を持たないマウスを育てたところ、活性化するとトリプシンとなる「トリプシノーゲン5」が、通常のマウスの千倍以上に増加した。

 トリプシノーゲン5が細胞内に過剰に存在する状態でマウスにウイルス感染などの刺激を与えると、トリプシノーゲン5が細胞外に漏れだし、全マウスが急性膵炎を発症したという。

 同様の現象が人間の膵臓でも起こっているかは未解明だが、松山教授は「人間でも起こっている可能性はある。どんな条件でIRF2の機能が低下するかを特定するのが課題だ」と話している。
2011年11月14日 提供:共同通信社