T細胞白血病ウイルスで 授乳法による影響検証


 

感染の妊婦3千人調査へ

 母乳を通じて母子感染し、白血病などの原因になる成人T細胞白血病ウイルス(HTLV1)について、厚生労働省研究班が、感染者の全国の妊婦3千人を追跡し、授乳の方法によって子どもへの感染率や発育にどう影響するかを調べる大規模な研究を始めることが5日、分かった。

 HTLV1感染をめぐる母子の調査は、感染者の割合が比較的高い長崎県などで実績があるが、全国的調査は初めて。授乳の仕方で母子関係に違いが生じるかも調べる方針だとしている。厚労省で同日、開かれた「HTLV1対策推進協議会」の初会合で報告された。

 HTLV1は成人T細胞白血病(ATL)や、歩行障害などが出る脊髄症(HAM)を引き起こす恐れがある。政府は昨年、総合対策をまとめ、感染の有無を全国の妊婦健診の際、公費負担で検査するようになった。

 計画によると、健診で感染が判明し、協力を得られた3千人を登録。生まれた子どもの授乳を、感染を低減できるとされる方法のうち(1)生後3カ月まで母乳(2)凍結後に解凍した母乳(3)粉ミルク-の3種類から選んでもらい、それぞれの方法でどれだけ感染を防ぐ効果があるか調べる。

 生後6カ月以上母乳を与えると約20%で感染するとされ、粉ミルクだけだと3%に抑えられることが分かっている。短期の母乳と凍結母乳の効果は詳しく分かっていないため今回、調べることにした。感染者の母親にも授乳を強く希望する人は一定程度いるとされる。

 3年後に子どもの身長や体重、運動能力などの発育状況を調査。母子関係も調べ、母乳や粉ミルクの与え方で違いが生じるかを検証する。研究代表は板橋家頭夫(いたばし・かずお)・昭和大教授


2011.07.06 提供:共同通信社