住民同士の信頼感が低い地域ほど高血圧を誘発する? そんな結果を、島根大疾病予知予防研究拠点の濱野強専任講師らの研究グループが突き止めた。ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)と呼ばれる地域社会の人間関係から血圧に与える影響にアプローチしたもので、濱野講師によるとこの手の研究成果は世界でも初めて。米国の学術誌「アメリカンジャーナルオブハイパーテンション」電子版に掲載された。【細谷拓海】
調査は08〜09年に行い、雲南、出雲両市に住み、特定検診を受けた住民を対象に実施した。インタビュー形式で有効回答を得た335人(平均年齢69・7歳)を、居住地域の郵便番号ごとに30地区に分け、血圧について調べた。
その中で、地域内で「他人は機会があればあなたを利用すると思うか」という問いに「はい」と答える人の割合と血圧の関係について調べた。投薬や喫煙など12項目の影響を除いて分析したところ、「はい」と答えた人の割合が1%上がると最大血圧は22・9ミリHg高くなる傾向があった。調査では、糖尿病の投薬治療▽喫煙習慣▽肥満▽高齢--によって血圧が上がる結果も出ていたが、人間関係も高血圧に影響していることも明らかとなった。
ソーシャル・キャピタルに詳しい静岡県立大経営情報学部の藤澤由和准教授(医療政策学)は「これまで高血圧対策の主眼は、個々の生活習慣の改善を通して行うものが主流だった。今後は地域内の人間関係を深めるなど居住地域ごとの対策も加味することで、より効果的な予防が期待できるのではないか」と今回の研究成果を評価している。
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