「生食用ではないことを把握していたが、アルコール殺菌すれば安全だと思った」 --。
富山県砺波市の焼き肉チェーン「焼肉酒家えびす」砺波店で生肉のユッケを食べた 高岡市の男児(6)が腸管出血性大腸菌「O(オー)111」に感染、死亡した集団食 中毒。同チェーンを運営するフーズ・フォーラス社(金沢市)は30日の本紙の取材 に、提供したユッケが厚生労働省が定めた生食用の基準を満たしていないことを認めた。
福井市内の同チェーン店で食事をした未就学の男児が死亡し、福井県が関連を調べ ているほか、新たに高岡市の同チェーン店でも7人が発症、うち3人が重症となった ことが判明。県内の累計患者数は38人、累計重症患者数は15人に上り、感染被害 が広がっている。
厚労省の生食用の肉に関する基準は、生レバーによる食中毒の多発を受けて、19 98年に制定。決められた場所と手順で牛などを解体するほか、販売する際は「生食 用」と明記する必要がある。ただ、基準には強制力や罰則規定が無く、「あくまでも 指導指針」(富山県)という位置づけで、順守するかは業者の姿勢に委ねられている。
同社に肉を卸販売している東京都板橋区の食肉販売業者によると、通常の食肉加工 場から仕入れた肉を500-600グラムごとに切り分け、表面などをアルコール殺 菌したあと、真空パックに入れて同チェーン各店に卸している。業者幹部は「あくま でも一般的な加工で、生食用ではない」とし、「殺菌処理はしているが、完全に無菌 にすることは不可能」としている。
同社によると、死亡した男児が食べたユッケは、同業者から砺波店に16日か19 日に届いた真空パック入りの生肉。冷蔵庫で保存した後、21日にユッケの形に切り 分け、20日に調理加工した分と合わせて客に提供。男児がこれを食べた。
同社商品部は「販売業者がアルコール殺菌した上で管理しており、生で食べても大 丈夫だという認識だった」としている。
焼肉酒家えびすは97年にオープン。翌年に法人化すると、12年間で20店舗ま で拡大した。急成長した理由の一つが100円メニューなど価格の安さで、今回、問 題となったユッケの価格は280円。同社ホームページでは、「2人に1人がリクエ ストを頂く商品です」と記載されている。