iPS細胞で拒絶反応 再生医療への応用に課題
米チーム、マウスで確認
【ワシントン共同】マウスの体細胞から作った新型万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を元のマウスに移植すると、遺伝情報は同じはずなのに、免疫細胞が異物を攻撃する拒絶反応が起きるとの研究結果を米カリフォルニア大サンディエゴ校のチームが13日、英科学誌ネイチャー(電子版)に発表した。
iPS細胞はさまざまな細胞に分化でき、患者の体細胞から作れば本人に移植しても拒絶反応は起きないと考えられていた。研究チームは「そうした考え方は再検討する必要がある」としており、体の失われた機能を回復させる再生医療への応用に向け、新たな課題になる可能性もある。
研究チームは、マウスの線維芽細胞に2種類の方法で遺伝子を導入しiPS細胞を作製。遺伝情報が同一の別のマウスに、このiPS細胞を移植した。数週間後、マウスの体内でiPS細胞からできた組織で細胞が壊死(えし)するなど、免疫細胞による拒絶反応が起きていた。2種類の遺伝子導入法のいずれでも同様の結果だった。
これらの組織では、いくつかの遺伝子が過剰に働いており、それが原因で拒絶反応が起きた可能性があるという。
一方、このマウスの受精卵から作った胚性幹細胞(ES細胞)を移植した場合は、拒絶反応は起きなかった。
研究チームは「今回の結果は、iPS細胞が医療に利用できないことを示すものではない。iPS細胞から分化してできる細胞のうち、どの細胞が拒絶反応を引き起こすのかを調べることが重要だ」としている。
※iPS細胞
皮膚などの分化した体細胞に外部から遺伝子などを導入して初期化し、さまざまな種類の細胞になる能力を持った人工多能性幹細胞。京都大の山中伸弥(やまなか・しんや)教授が2006年にマウスで、07年に人間での作製成功を発表した。神経や筋肉、血液などに分化させた例が報告され、再生医療、病気の原因解明、新薬開発などへの利用が期待されている。受精卵を壊して作る別の万能細胞「胚性幹細胞(ES細胞)」に比べ、iPS細胞は倫理的問題は少ないとされるが、がん化などの懸念があり安全性向上が課題となっている。