乳がんの悪性化に深く関与するタンパク質「HER2」に付く糖鎖の違いを、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一(たなか・こういち)島津製作所フェローが京都大と共同で世界で初めて解析したと8日明らかにした。
糖鎖は糖質が鎖のように結合し、細胞表面から生えている。田中さんによると、これまでHER2の糖鎖に違いがあるとは考えられていなかった。糖鎖自体もがんに関わっており、今後、人によって違う抗がん剤の効き目の確認や、治療に役立つ可能性がある。
田中さんは、タンパク質の質量を測る手法の基礎原理を開発し2002年にノーベル賞を受賞。
従来は、HER2を含むさまざまなタンパク質の試料を固体の状態で質量解析していたが、田中さんらは溶媒を使ってこれらの試料を液体化。一部しか確認できていなかったHER2の糖鎖の全容を確認した。
また東京大との共同研究では、腫瘍の転移や浸潤の仕組みに関連するタンパク質の糖鎖などの解析にも成功したという。
試料を液体化することで、がんなどさまざまな疾病との関連が指摘されるリン酸ペプチドの分析感度が千倍になった。