さわやかで過ごしやすい秋は、夜ぐっすり眠れる季節。猛暑でたまった疲れをいやしたいところだが、体に合わないまくらを使っていると眠りが浅くなり、肩こりの原因にもなる。すきりした目覚めを迎えられるように、自分に合ったまくらを見つけるにはどうしたらいいのか。 |
千葉市の団地内にあるさつきが丘医院には、10年ほど前から肩こり、頭痛、不眠などを訴える住民がよく訪れるようになった。整形外科医の奥山隆保院長は「体に合わないまくらによる症状が多い」と話す。
二足歩行を始めたヒトは重い脳を二本の足で支える必要があった。そこで、背骨から首までがS字のカーブを描き、体重を前後に分散させるようにした。
まくらの役割は、この首から背骨にかけての自然なS字形を、眠っているときも保つことにある。
従って、最も望ましいまくらの形は、中央部が低く、両わきと首が当たる部分が程よく盛り上がっているもの。この形は後頭部が出ていて首が細い、ヒトの体の形に合っている。
ところが、一般的にまくらというと、中央部がふくらんでいるものを思い浮かべる人も多いだろう。
「まくらが首のS字に合わないと、特定の部分に圧力がかかり、様々なトラブルが起きることがある」と東京女子医大整形外科の伊藤達雄主任教授は話す。
寝起きに首の周りがだるい、いびきをかく、あおむけで寝られない、首の前のしわが多いなどの悩みがある人は、高すぎるまくらを使っていることが多い。寝るときにまくらの上に手を添える、起きがけに顔がむくむという人は、まくらが低すぎる可能性がある。
頭の形、首の長さや太さ、肩のラインは人によって違うので、他人がすすめるまくらが必ずしも自分にも合うとは限らない。体の特徴を把握し、合ったまくらを探すことが大切だ。
それでは、自分の体の特徴を知るにはどうしたらいいのか。
まず首の後ろのカーブの深さを測る。やせ形の女性は1センチメートルから、がっしりした体形の男性では6センチメートルまでと、かなりの差がある。測った数値に合わせて、カーブが深い人は首筋の当たる部分が高め、浅い人は低めのまくらを見つける。
次に後頭部の出っ張り具合を調べる。後頭部が出ている人はまくらの中央部を低めにし、平らな人は段差を少なくする。肩のラインや、肥満かやせ形かといったことも考慮すること。
まくらの中身の素材も重要だ。固めのそばがらを使っている人が急にやわらかい羽毛などを使うと違和感を覚えやすいので、使い慣れた素材が望ましい。暑い時期にウレタンフォームなど通気性の悪い素材を使うと寝苦しくなるので注意。
眠っているうちにまくらの中身が片寄ると、頭や首が安定しない。いま使っているまくらを利用するなら中央を縫い留めて中身を固定する方法がある。買い替える時は、首筋や両わき部分などが独立した袋か、縫製のまくらを選ぶとよい。
あとはまくらを実際に5分間ほどあててみて、自分との相性を確かめる。「どこか一部分に力がかからず、ふっと肩の力が抜けるものがぴったりと合っている証拠」と西川産業(東京・中央)営業戦略室の大木亨チーフリーダーは言う。
西川産業やまくらを専門に扱うロフテー(東京・中央)は、各地の百貨店などに売り場を設けており、備え付けのベッドに寝転んでみて、まくらに関する専門知識を持つ店員から様々なアドバイスを受けることができる。
ロフテーの眠りのコーディネーター、三橋美方さんは「ぴったりのまくらを見つけたとき、お客様の顔に自然と笑顔がこぼれます」と話す。「気持ちがいい」という本人の感覚が一番確かなようだ。
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