臍帯血で脳性まひ治療へ 乳児に、高知大が国内初
幹細胞で修復、再生狙う
高知大は29日、早産や母胎内での発育不全などで脳性まひになった赤ちゃんに、出産時にへその緒から採った自分の臍帯血(さいたいけつ)を投与する治療を臨床研究として実施すると明らかにした。
臍帯血に含まれる幹細胞が働いて、損傷した神経細胞などを修復、再生するとみている。国内初の試みで、新たな再生医療として期待される。
厚生労働省が11月上旬、安全性や有効性を確かめる臨床研究計画を承認しており、来年2月にも対象者を決める。
対象は5年間で10人を目指し、妊娠33週未満で生まれたり、出生時の体重が約1500グラム未満になる可能性が高かったりするなど脳性まひを発症しやすいケース。
高知大病院(高知県南国市)で出産することが条件で、出産直後に臍帯血を採取し、赤血球や血小板を取り除いて凍結保存。生後半年〜1歳ごろに脳性まひと診断された場合、解凍して血液を点滴する。本人の臍帯血を使うため、拒絶反応を起こす心配がない。
脳性まひは主に母胎内で胎児が脳に損傷を受け、運動機能などの障害が起きるもので、千人に2人程度の割合で発症するとされる。根本的治療法はなくリハビリが中心。
米デューク大では2005年から、同様の臨床研究を始め、8人中6人で運動機能などが大幅に改善したという。
再生医療ではさまざまな細胞や組織になる能力がある人工多能性幹細胞(iPS細胞)が脚光を浴びているが、研究を担当する高知大の前田長正(まえだ・ながまさ)准教授は「iPSの臨床研究は数年先になると見込まれる。臍帯血の方がコストも低く、がん化の恐れがないなど安全性が高い」と話している。
※臍帯血(さいたいけつ)
母親と胎児を結ぶへその緒と、胎盤の中に含まれる胎児の血液。赤血球や白血球、神経のもとになる幹細胞が多く含まれ、移植することで白血病や再生不良性貧血などの血液病や、遺伝病の治療などに役立てられる。国内には、個人から有料で臍帯血を預かる民間バンクや、公的バンクもある。高知大によると、米国や韓国などでは出産時に臍帯血を採取、保存する動きが活発。