脂肪ホルモンが心筋保護、
名大 脂肪組織由来ホルモン「CTRP9」が心筋梗塞を改善
名古屋大学大学院医学系研究科は5月7日、脂肪組織が産生しているホルモン「C1q/TNF-related protein 9」(CTRP9)が、心筋細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制することで虚血性心疾患を防ぐ作用を持つと報告した。分子循環器学講座の大内乗有氏らによる成果。
近年、脂肪組織が産生する種々のホルモンが肥満症に影響することが明らかとなってきたが、心臓病への関与についてはまだ解明されていない。研究グループは脂肪由来のホルモン「CTRP9」に着目し、虚血性心疾患に対する作用を調べた。
研究グループは、急性心筋梗塞のモデルマウスを使って、冠動脈をいったん結紮してから解除し「心筋虚血再灌流」の状態を再現。結紮の前後にCTRP9を全身投与すると、いずれも心筋梗塞巣が縮小する心筋保護作用を示した。このとき、心筋細胞のアポトーシスが抑制されていた。培養心筋細胞での実験により、CTRP9がアポトーシス抑制シグナル伝達物質「AMP活性化プロテインキナーゼ」を活性化させていると判明。心筋細胞のアポトーシスを抑制することで心筋梗塞の改善作用を発揮したと考えられる。
次に、研究グループは肥満状態における血中CTRP9濃度を調べ、心筋梗塞の発症との関連を検討した。肥満マウスではCTRP9の血中濃度が低下。また、急性心筋梗塞後のマウスの脂肪組織ではCTRP9発現や血中濃度も低くなっていた。研究グループは、CTRP9の血中濃度を上昇させれば心筋梗塞を改善し得ると想定。今後、虚血性心疾患の新たな治療薬の開発につながるとも見ている。