「異常な事態」学会で発表 胆管がん調査の准教授
大阪市にあるオフセット校正印刷会社の元従業員が高頻度で胆管がんを発症し男性4人が死亡した問題で、実態を調査していた産業医科大(北九州市)の熊谷信二(くまがい・しんじ)准教授が31日、名古屋市で開かれている日本産業衛生学会で症例の概要などを発表し「明らかに異常な事態だ」と指摘した。
熊谷准教授によると、同社の校正印刷部門に勤めていた男性従業員33人のうち少なくとも5人が胆管がんを発症し、4人が死亡した。発症年齢が25〜45歳と若く、発症率は日本人平均の約600倍と高かった。
同社は、大量に印刷する前などに少部数を印刷して誤植や発色などを確認する校正印刷を専門とする会社だった。頻繁に色や版を替え、有機溶剤を含む洗浄剤で機械などに付着したインキを落とす作業を工場内全体で一日300〜千回繰り返していたとの証言もあるとした。
熊谷准教授は「洗浄剤に含まれる『1、2ジクロロプロパン』や『ジクロロメタン』などの有機溶剤が原因ではないか」とした。同社では防毒マスクは支給されていなかったという。これらの有機溶剤は動物実験では発がん性が指摘されているが、人間への影響に関する十分な調査はされていない。
会場からは「他の会社でも有機溶剤が原因で胆管がんを発症している恐れはあるのか」などと質問があり、熊谷准教授は「これまでに明らかになっている事例は知らない」と答えた。