横浜市立大や大阪大などの研究チームは4日、飲酒しなくても発症する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)について、太っている人の肝臓が腸内細菌に過敏に反応することで肝炎を発症するメカニズムを初めて突き止めたと発表した。
研究チームによると、NASH患者はメタボリック症候群に該当する人を中心に全国で200万人以上に上るが、原因などが分からず、有効な治療法がなかった。今回の研究成果で、治療薬開発などが進みそうだ。
研究チームは、肥満になると脂肪細胞から多量に分泌される食欲抑制ホルモンのレプチンの影響で、肝臓が血液中の腸内細菌毒素リポポリサッカライド(LPS)に過敏に反応し、肝炎を発症することをマウスの実験で確認したという。
チーム長の中島淳(なかじま・あつし)横浜市立大教授(消化器内科)は「花粉症患者のように肥満者が細菌に過敏反応することが分かった。治療法や診断法の開発に役立てたい」と話している。
論文は4日付米科学誌セル・メタボリズムオンライン版にも掲載した。
※非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
酒を多く飲まなくても肝臓に中性脂肪がたまる非アルコール性脂肪肝(NAFLD)が進行して炎症を起こす病気。重症化すると肝硬変や肝臓がんに進行する。1990年代以降急激に増え、全国で1千万人以上とされるNAFLD患者の1〜2割がNASHを患う。糖尿病や肥満、高血圧の患者が併発するケースが多い。