マリアアザミ薦める人も

脂肪肝の人が急増している。いまや約3人に1人が脂肪肝と推定されている。食べ過ぎ、飲み過ぎが主な原因だ。食事量を減らし、運動を日常的にすれば治るのだが、なかなか実行できない。栄養補助食品を利用して、治療効果を高める試みが始まっている。

東海大学付属病院(神奈川伊勢原市)の調査によると、1989年から98年までに同院検診センターで健康診断を受けた約3万5千人を調べたところ、89年に12.6%だった脂肪肝の人の割合は、98年には30.2%と2倍以上に増えた。

調査を実施した東海大学医学部消化器内科の松崎松平教授は「ランチグルメの流行や飲酒量の増加といったライフスタイルが、患者数増加の一因ではないか」と分析する。

肝臓に脂肪がたまって肝臓の機能が悪くなるのが脂肪肝。肝臓は沈黙の臓器といわれるように、これといった自覚症状はないが、生活習慣病の初期状態だ。脂肪肝の状態が続くと糖尿病や痛風になったり、肝硬変など重い肝臓病に発展することもあるからだ。

食べ過ぎ、飲み過ぎが主な原因で、肝臓が悪くなると、血液中に出てくるGPTやGOT、γGTPというたんぱく質の量が増える。血液検査の結果で、これらの数値が基準値をオーバーしていたら要注意だ。

しかし「健康診断で正常だったから安心」とはいえない。厚生労働省の99年度の調査報告によると、脂肪肝患者のうちGPTが異常値だった人は36%に過ぎなかったからだ。

やせているから大丈夫とも言い切れない。体格指数(体重[キログラム]÷身長[メートル]÷身長[メートル])が25未満の非肥満者のうち、脂肪肝の人の割合は10年前の7.2%が、98年には20.5%に増えた。太っていなくても5人に1人は脂肪肝ということになる。

脂肪肝を治すのに、薬はいらない。食事・運動療法に詳しい順天堂大学浦安病院(千葉県浦安市)の飯島敏彦助教授は「食事の量を今までの4分の3程度に減らし、軽い運動を続ければ、2週間程度でよくなってくる」と話す。

脂肪肝チェックリスト
「こんな人は要注意!」

この3年で3キログラム以上太った
2点
体脂肪率が男性30%、女性35%以上
2点
日本酒で1日3合以上の飲酒を
5年以上続けている

2点

中性脂肪や総コレステロール値
あるいは血糖値が高い

2点

尿酸値が高い
2点
外食がちでファストフードをよく食べる
2点
単品ダイエットで1ヶ月に
5キログラム以上やせた
2点
これといった運動はしていない
2点
疲れやすい、根気がなくなった
2点
当てはまる項目にチェックし、合計点数が4点以上の人は脂肪肝の可能性が高い。詳しい検査を受けてみたい。
(注)東海大学医学部消化器内科・松崎松平教授の協力により日経ヘルス編集部で作成

運動は1日20分程度、軽く汗ばむ程度のウォーキングを週3回。食事を制限しながら運動すると体重や体脂肪率が減り、GPTやGOT、γGTPの値も下がり、1、2ヵ月後には超音波検査で見た肝臓の状態も正常になるという。

とはいえ、食事量を減らし、運動するのはなかなか実行しにくい。そんな人に向けて、肝臓の機能を向上させる成分を含むサプリメント(栄養補助食品)が相次ぎ登場している。

マリアアザミは肝臓を保護する作用の研究報告が最も豊富なキク科の植物。肝細胞を修復し、肝臓で発生した活性酸素や過酸化脂質を減らす作用を持つ。170人の患者を対象にしたオーストラリアでの厳密な臨床実験で、肝硬変の患者の生存率が高まることが確認されている。

市ヶ谷柳沢クリニック(東京都新宿区)の柳沢秀敏院長は、肝臓病の患者にマリアアザミの摂取を薦めている。「お酒をよく飲む人は肝臓に悪いといってもやめられない。そういう人に薦めている。1、2ヵ月後には肝機能がよくなってくる」と柳沢院長。

マリアアザミのエキス量で1日420ミリグラム程度のむといい。価格は1ヵ月分で3千円−8千円程度。副作用は特にない。

沖縄名産のウコンは、動物実験で脂肪肝に効くことが確認されている。アルコールを分解するのに必要な胆汁酸の分泌を促す作用もあり、二日酔いの予防効果もある。ウコンには春ウコンや秋ウコンなどがあるが、いずれも肝機能を強化する作用を持つ。

1日3−5グラムが目安。大量にのむと鉄欠乏性貧血になるという報告もあるので、10グラム以内にとどめておきたい。価格は1ヵ月分で千円−5千円程度だ。(『日経ヘルス』編集部)

(2002.1.19 日本経済新聞)