ブルーライト パソコン画面から出る青色の光 
目や睡眠に影響、対策は?

 

 ◇寝る前のスマホ控えて 緑黄色野菜積極的に

 パソコン(PC)やスマートフォンなどの画面から出る青色の光「ブルーライト」が、体に影響を与える可能性があるとして注目されている。目や睡眠に影響を与えるとされ、最近は青色光を減らすメガネやフィルムなどの対策グッズも相次いで販売されている。どんな影響があり、どんな対策を取ればいいのだろうか。【下桐実雅子】

 「パソコンや携帯電話の画面を日常的に見る時間が長くなっており、ブルーライトの影響は無視できない。生活習慣が変わっているのだから、必要な保護対策をしないと、目に影響を与える可能性がある」。こう話すのは、むらかみ眼科クリニック(熊本県宇土市)の村上茂樹院長だ。

 海水浴やスキーに行き、紫外線の影響で目が赤くなる角膜炎になったことのある人もいるだろう。光による刺激が目に悪影響を与えることは、以前から知られている。だが、青色光には他の光とはやや異なる特徴がある。

 太陽光は、赤、緑、青などさまざまな色の光が混ざって白っぽくみえる。中でも、青色系の光は紫外線に次いでエネルギーが強く、水晶体を透過して網膜に影響を与えやすいという。

 5月の金環日食の時に話題になった「日食網膜症」は、太陽光を直接見ることで目の痛みやめまいを起こす恐れがあるが、この原因になるのも、主に青色光だという。

 村上院長は「網膜の中心部には、視力にとって最も大事な黄斑があり、青色光の影響を強く受ければ、加齢黄斑変性と呼ばれる病気を引き起こす原因になる」と話す。

 加齢黄斑変性とは、見ようとするところが見えづらくなる病気で、失明の原因にもなり得る。光の刺激を受けると悪玉物質の活性酸素が出やすくなり、黄斑に炎症を起こす。

 パソコンやスマートフォンなどの端末から出る青色光は、太陽光に含まれる青色光に比べれば微弱だ。しかし、画面を毎日長時間見続ければ、目への影響が心配されるという。村上院長は「特に子どもは、大人に比べて水晶体の濁りが少ないため光の透過性が高く、より影響を受けやすい」と懸念を示す。

 影響を小さくするにはどうすればいいのか。村上院長は、屋外ではつばの広い帽子や日傘で日光を避ける▽青色光を減らすメガネなどのアイテムを活用する――ことを勧める。やや意外なのが食生活への注意。「ホウレンソウなどに含まれる抗酸化色素のルテインは黄斑を保護しているが、体内では生成できない。こうした緑黄色野菜を積極的に食べることも大切です」と話している。

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 寝る前にパソコンやスマートフォンを見る人も少なくないが、睡眠評価研究機構の白川修一郎代表は「青色光を浴びると寝付きにくくなる」と指摘する。

 就寝前の1〜2時間ぐらい前に分泌され、目覚めを抑える「メラトニン」というホルモンがあるが、青色光にはメラトニンの分泌を抑える作用があるという。そもそも、パソコンなどの機器を使うこと自体、脳を興奮させる。寝付きが悪くなれば、睡眠時間や睡眠の質にも悪影響が及ぶ。

 「ただし、朝の青い光は眠気を覚めやすくする。体内リズムを調整するのに必要です」と白川代表。「午後6時以降は青白い光を避け、照明の明るさを落とすなど、生活に支障が出ない範囲で光環境を調節する工夫をしてほしい」とアドバイスする。

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 青色光には「波長が目を疲れさせやすい」という特性もある。南青山アイクリニック東京(東京都港区)の井手武副院長は「青色光は波長が短く、散乱しやすい特性があるため、まぶしさやちらつきの原因となり、目の疲れに影響している」と話す。

 デジタル機器の画面のまぶしさやちらつきを減らすという「青色光カットメガネ」が相次いで発売されている。

 ニコン・エシロールは昨年6月から、青色光を反射させる透明レンズを販売している。同社の調査によると、デジタル機器で多く使われるLEDの液晶モニターや昼白色のLED電球は、従来のブラウン管の画面や白熱電球に比べ、青色の光を強く発している。青色光を減らすことで、文字や輪郭がよりはっきり見えて、目の疲れも軽減されるという。マーケティング担当者は「予想の2倍の売り上げで、特に今年に入って勢いがある。紫外線もカットするので、屋外でも快適に過ごせる」と話す。

 セイコーオプティカルプロダクツも今年4月、特殊コーティングで青色光を反射させるレンズを発売した。メガネブランド「ジンズ」や「ゾフ」も、パソコン対応メガネを販売する。ジンズを展開する「ジェイアイエヌ」によると、7月末までに累計40万本を売り上げたという。田中仁社長は「これまでメガネ店に縁のなかった人が買っている。目を守りたいという時代のニーズに合っているのでは」と話す。

 「ソフトバンクBB」も5月から、スマートフォンの液晶画面に貼り付けて青色光を低減するフィルムを発売している。

 ◇仕事のPC使用、1日6時間以上が最多

 厚生労働省の「技術革新と労働に関する実態調査」(08年)によると、パソコンなどのコンピューター機器を使う労働者の割合は87.5%。1日の平均作業時間は「6時間以上」が25%で最多。「2時間以上4時間未満」(24.1%)が続いた。

 仕事以外での1日の平均使用時間は「1時間未満」が半数を占めたが、「1時間以上2時間未満」(19.2%)、「2時間以上4時間未満」(11.5%)との回答も多かった。

 コンピューター機器の作業で体の疲労や症状を感じている人は68.6%。「目の疲れ・痛み」が90.8%と最多で、「首、肩のこり・痛み」(74.8%)と続いた(複数回答)。連続作業時間が長いほど、疲労や症状を感じる人の割合が高かった。

2012年8月8日 提供:毎日新聞社