◇体操や入浴法工夫で効果 姿勢を正しく/おすすめは全身浴/枕も体に合わせて
秋が深まり一気に寒くなってきた。夏の暑さで緩んだ筋肉は冷えると一気に緊張し、肩こりが重症化しやすくなる。首や肩が重苦しい、慢性的な痛みを抱えるあなた、少しでも楽になるための対処法を紹介します。【小川節子】
★体操
肩こりで悩む人の多くは「専門医を受診するほどではない」と思いこみがちだ。東京都調布市の「平沼整形外科クリニック」では、こうした人のために3年前から肩こり外来を併設している。院長の平沼尚和さんによると、受診者の9割以上が女性だという。
季節の変わり目、特に寒くなるこの時期に肩こりを訴える人が増える。原因としては姿勢の異常、骨のゆがみが一番多く、次いで冷え症、貧血、偏頭痛などがある。
「患者さんをレントゲンでみると肩や首の骨が左右どちらかに傾いていたり、カーブしているはずの背骨が直線になっていたりする人が多い。その分、筋肉に負担がかかり、こりがひどくなる」と平沼さんは話す。
女性は男性に比べて筋肉の量が少ないため、筋肉が疲れたり、血の流れが悪くなったりしやすい。また、パソコン画面を長い時間見ている人は前かがみの姿勢でいるため、眼精疲労がおこり、肩こりにつながる。
「同じ姿勢でいる人は1時間に1回は立ったり、歩いたりして姿勢を変えることが大切です」と話す。
また、筋肉をつけるためにおすすめの肩こり体操(イラスト)を週2、3回以上行ってほしいという。
★入浴
体を温めて血行をよくすることで、体のこりはかなり楽になる。バスクリンのお風呂博士、石川泰弘さんは、全身浴をすすめる。
「半身浴は長時間入っていられますが、肩や首が冷えてしまい、こりはとれにくい。肩こりに悩む人は一年中、全身浴にしてください」とアドバイスする。
全身浴は(1)浮力によって筋肉の緊張がほぐれ、心身ともにリラックスできる(2)体が温まるため血行がよくなり、自律神経もコントロールできる(3)呼吸の回数が増え、心肺機能が高まって血流が促される――の三つの効果がある。ただし、心臓に疾患のある人は、全身浴だと負担がかかりすぎるので、半身浴がおすすめ。
東京ガス都市生活研究所の調査によると、40度のお湯で10分間全身浴をすると、肩こり度「1」が湯上がり時には「0・9」、30分後には「0・8」に改善されたという。
また、肩こりの原因の一つに「目の疲れ」がある。同研究所が42度と32度のシャワーをそれぞれ目にあててみたところ、42度の場合、視力の一時的な低下が回復し、すっきり感、しょぼしょぼ感の減少が見られたという。
同研究所主幹研究員の興梠(こおろき)真紀さんは「温かいタオルを目にあてたり、シャワーで温めることで目の疲れも回復します」と話す。
半身浴の場合はお湯につかった後、熱めのシャワーを肩に3分ほどあてる。また、毎日でなくとも週に2、3回はお風呂の中で肩周りのストレッチをするのもおすすめだ。
★枕
枕が合わないために肩こり、頭痛、不眠になることもある。相模原市の「16号整形外科」は枕外来を併設し、枕の指導をしている。院長の山田朱織(しゅおり)さんは「睡眠中の姿勢の大切さに気づかない人は多い」と話す。
個人差はあるが、良い姿勢で6、7時間寝て首や肩を休めると、こりをほぐせる。ただこの時、首に合わない枕を使っていると休むどころか、逆にこりがひどくなる。
枕指導によって患者の肩こりは約7割に改善がみられたという。同病院は玄関マットとタオルケットを持参してもらい、実際に枕を作る。
横80〜90センチ×縦60センチのマットを三つ折りにする。タオルケットをその大きさに合わせ折りたたみ、マットの上に重ねる。タオルの厚みで高さを調整する。
調整の目安は
(1)上向きに寝た時に、息の通りが楽にできる高さに。角度は15度前後。
(2)横向きに寝た時に額、鼻、あご、胸の中央の高さが一直線になり、床面と平行になる。
(3)左右にころころと寝返りしやすい。
この3点のバランスを考え、その人に合った枕の硬さ、高さを決める。また、実際に寝てみて朝、枕がずれていないかどうかもポイントだ。
「枕は頭が沈まず、フラットで横長であること、ベッドや体重の変化に対応できるものがいい」と山田さんはアドバイスしている。