東京医科歯科大学、研修医セミナー第16週「赤い目を見たら」─Vol.1
「赤い目を見たら」
Vol.1◆涙や目やにで緊急度の判断
Vol.2◆有効な治療のない流行性角結膜炎
Vol.3◆嘔吐や頭痛伴う急性緑内障発作
Vol.4◆進化続く最新の眼科治療
目の赤い患者の背景疾患には多くの可能性がある。
涙や目やにで緊急度の判断ができる。
眼科助教の宮永将氏が基本から解説する。
まとめ:池田宏之(m3.com編集部)
良く見る「目が赤い」症状
総論の講師は東京医科歯科大学眼科の宮永将氏。
宮永 今回のイブニングセミナーの内容は、眼科の入院患者、外来患者を対象にしたものではありません。それ以外の外来患者や入院患者で、例えば「目が赤いな」と見た時に、すぐに患者を眼科に紹介すべき症例を説明します。「コンサルトして診てもらうべきなのか」「少し余裕を持って対応していいのか」を判断できるようになってほしいと考え、内容を組んでいます。
明日から実際の臨床で使える知識が身に付けば良いと思っています。よろしくお願いします。今回、担当します、眼科の宮永です。
最初に目の症状ですけが、よくある眼科の症状としては、「見えなくなった」「目が痛い」「何かが飛んで見える」「2つに見える」「目やにが出る」などがあります。あとは、今回のように「目が赤い」という症状を訴えて来る方が多いです。実際、目が赤い患者に遭遇した場合、その赤さが何なのかを、皆さん確認してください。
出血は血管が追えない
血管が追えない出血。
宮永 こちらに写真を持ってきましたが、どちらが出血でどちらが充血かというのは分かりますか。
研修医 左側が出血。
宮永 左側が出血。その通りです。結膜、いわゆる白目のところにべたっとした出血、赤い部分があるのが出血です。充血は、どんなに赤く見えても、結膜の血管が太く、赤くなっているので、必ず1本1本の血管が追えるはずです。「血管の1本1本追えるのが充血で、追えないでべたっとしているのが出血」と覚えてください。
出血の代表例は、結膜下出血です。さきほど挙げたものに加えて、外傷による結膜下出血が挙げられます。充血は、一般的な細菌性やウイルス性の結膜炎です。角膜炎、ぶどう膜炎、急性緑内障発作、結膜腫瘍などでも見られます。
飲酒でもなる結膜下出血。
その1として、結膜下出血を説明します。結膜下出血は結膜の毛細血管の破綻によって漏出した血液が結膜下に貯留する疾患です。原因は、よく分からないことが多いですが、加齢による結膜血管の脆弱化や、寝ている間に目をこすったというような機械的刺激です。あとは、くしゃみや咳、過度な飲酒でも、結膜下出血が起こると言われます。
症状は、特にないことが多いです。「鏡を見たら赤いから来た」「人に目が赤いと言われて来た」と言う方がほとんどだと思います。異物感を訴える人もいますが、症状がほとんどないのが特徴です。
結膜下出血がひどくなると、結膜全体が真っ赤になったり、まぶたを閉じても腫れた結膜が外にはみ出ているような状態になったり、血液の固まりが見えたりすることもあります。
基本的な結膜下出血の治療ですが、内出血なので、その時点で何かすることはあまりできません。通常は1週間から2週間程度で自然に消退しますので、そのまま様子を見ることが多いです。場合によっては、血管収縮剤の使用で、少し症状が良くなることがありますが、基本的には経過観察のみで大丈夫です。
結膜下出血のほかに充血が強いケースがあります。この時、流涙や目やにがたくさん出る場合は、結膜下出血と考えてはいけません。
流涙や量の多い目やにに注意
流涙や多い目やにに注意。
宮永 これは急性出血性の結膜炎です。エンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって引き起こされる結膜炎です。特徴は、いわゆる眼脂、目やにが出ていることです。漿液性や粘液膿性の目やにが出たり、結膜に濾胞が見られたり、耳前リンパ節が腫れたりという症状です。この場合、感染力が強いウイルス性の結膜炎ですので、「結膜下出血」と安易に考えないでほしいです。
今までの特徴を踏まえて、明らかに結膜下出血、つまりべたっとした赤い出血のみで、患者さんも特に目やにや痛みを訴えていければ、様子を見ても大丈夫かと思います。