加齢や喫煙、動脈硬化で、大脳の白質病変進行、
判断力低下で交通事故が増える?
※白質病変
加齢や動脈硬化などにより、大脳の白質内の微細な血管が消失してできた隙間で、血の流れが不十分な部位と考えられている。高知工科大チームによると、軽微なものを含めると、健康な中高年の約30%に見られるとのデータがある。糖尿病や高血圧、高脂血症、メタボリック症候群のほか、喫煙習慣のある人に伴う病変として知られる。
大脳で神経線維や血管が集まる白質に隙間ができ血の流れが悪くなる「白質病変」が左右の脳にある人は、車を運転中に交差点で事故を起こすリスクが高いとの研究結果を、高知工科大の朴啓彰(パク・ケチャン)客員教授のチームがまとめ、21日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。
朴客員教授は「交差点での運転には高い情報処理能力が必要。白質病変により、能力が低下するのが事故の原因ではないか」としており、病変の程度に応じ運転指導するなど、事故防止に役立つ可能性がある。チームは、白質病変と交通事故の関連性を示したのは世界で初めてとしている。
チームは脳ドックで磁気共鳴画像装置(MRI)による脳検査を受けた21〜87歳の健康な男女3930人に、過去10年に交通事故を起こしたことがあるかやその形態をアンケート。
白質病変の有無と事故歴を解析した結果、左右の脳に軽微な白質病変がある人が交差点内で衝突・追突事故を起こすリスクは、病変がない人の約3・4倍だった。
一方、病変が重度の場合、リスクは約2・5倍と低下。この点について朴客員教授は、病変が軽微な時に事故を起こすなどして運転能力が落ちていると自覚し、注意して運転するようになったのではないかとみている。
駐車場内の物損事故や、交差点以外での追突事故ではリスクは高まらず、「車の動きが遅いこと、追突はうっかりミスもあるためと推測される」(朴客員教授)とした。軽微な病変が片方の脳にだけある場合も高リスクにはならなかった。
白質病変が広範囲になると認知症や脳卒中になりやすいとされるが、今回の調査対象者には病変による症状はなかった。