意外と口角炎が真菌症
 

【研修最前線】

東京医科歯科大学、研修医セミナー第20週「皮膚疾患の基本」─Vol.2

「皮膚疾患の基本」

Vol.1◆困る、原因不明も多い蕁麻疹

Vol.2◆意外と口角炎が真菌症

Vol.3◆怖い重症薬疹DIHSの基本

Vol.4◆アトピーに意外と疥癬


ありふれたアトピー性皮膚炎と真菌症。
意外と知られていない実態を把握したい。皮膚科講師の西澤綾氏が解説する。
まとめ:島田昇(m3.com編集部)

アレルギーと非アレルギーの側面

講師は東京医科歯科大学皮膚科講師の西澤綾氏。(写真:村田和聡)

西澤 アトピー性皮膚炎の一番典型的な像としては、まゆげの外側3分の1の毛がないとか、首の部分などが苔癬化で硬くなっていたり、間接部も苔癬化して丘疹が多数認められたり、掻破痕もいっぱいあったりという状態です。

アトピー性皮膚炎の病態には、アレルギー的な側面と非アレルギー的な側面があります。まずはこのアレルギー的側面ですが、IgEの抗体を普通の人より産生させやすくて湿疹が起こりやすくなっています。湿疹反応とは、抗原が入ることによって、それらを排除しようとして炎症反応が起こる症状を言います。入り方としては、花粉を吸ってしまったりして気道的に入る形、ダニ抗原などが経皮的に入ってしまう形があります。

IgEの湿疹反応ですが、皮膚にある表皮ランゲルハンス細胞というところに高親和性IgE受容体を持っていて、ここに特異的に第2抗原がくっつきやすくなっています。T細胞の抗原提示が起こって炎症が引き起こされるという仕組みになっています。

非アレルギー的側面、ドライスキンとかバリア機能の障害についてですが、ドライスキンは水分量が少なく、ひび割れしてかさつく状態のことを言います。水分量を規定する因子としては、細胞間の脂質、天然保湿因子、皮脂の3つが重要になってきます。角質の水分量の保持に関してはまず一番上に皮脂が一層あって、まず水を保てるように蒸発しないようにしています。細胞間脂質、いわゆるセラミド、あとは天然保湿因子としてのアミノ酸などがこの間に入っているような形になっています。

普通の皮膚の状態の人ですと、刺激の因子が入ってきても、まず皮脂膜があるので直接入れません。アレルゲンに関しても入れない形になっています。保湿も保てるような形になっています。しかし、アトピー性皮膚炎のようなかさかさ肌の場合は、ドライスキンになってくると、先ほどあった皮脂膜がなくなってしまっています。したがって、刺激因子も入りやすい。アレルゲンも入りやすい。あとは水分も蒸発してしまうという状態になっています。

ということで、アトピー性皮膚炎の病態は、アレルギー的側面としてはIgEを過剰に産生させてしまうダニとかほこりとかに対する抗体をいっぱい作ってしまう。非アレルギー的側面ではドライスキンという状態でいろいろなものが入り込みやすくなってしまう。あとはアレルギー性接触皮膚炎が起こりやすくなってしまうので、アトピー性皮膚炎が悪化するという状態になります。

真菌症は検鏡すれば分かる

足白癬西澤 今度は真菌症です。足白癬のように水疱というか膿疱のようなタイプのもの、いわゆる鏡もちみたいなタイプもあります。爪白癬は爪が厚くなってしまうもので、頭髪が抜けてしまう頭部の白癬というものもあります。

実際こういう皮膚を採ってみて顕微鏡で見てみると、真菌の菌糸を確認することができて診断に至ります。そのほかカンジダ症というものもありますが、こちらの場合は検鏡すると菌糸というより、胞子が認められることが多いです。間擦部に白っぽく苔が生えたような感じになっていたりして、環状に鱗屑を伴うのが特徴になります。カンジダの場合、膿疱なども伴うことが多いです。

あとは意外と口角炎としてフォローされている方も多いのですが、ケナログとかで治らず、口角のびらんがある人でカンジダが認められることもあります。こういう場合はケナログを塗るばかりでなく、一度検鏡した方がいいでしょう。主婦の方とかでもよくありますが、指の間に落屑を伴うような紅斑がある場合もカンジダ性の指間びらん症という病気になります。こちらも検鏡をするとすぐに分かります。

治療の原則は、抗真菌薬の外用または内服をさせます。また、皮膚科医は真菌検鏡にて真菌要素を確認して診断確定しない限り抗真菌薬を使用しません。別に白癬と似たような病態で手足に水疱や膿疱が見られる病気がありますが、こちらは掌蹠膿疱症という病気で、掌蹠に限局して膿疱、水疱を認めるものなので、こちらは検鏡しても陰性になる症状です。

2013年3月7日 提供:島田昇(m3.com編集部)