風疹の感染拡大に歯止めがかからない。
今年に入って厚生労働省に報告された患者は関東地方を中心に1656人で、昨年同期の20倍以上。患者の約7割を占める20-40歳代の男性のワクチン接種率が、費用負担などの問題で低迷しているためだ。妊婦が感染すると胎児に重い障害が残るケースもあり、同省は「特に妊婦の夫は予防接種を受けてほしい」と呼びかけている。
厚労省によると、風疹の患者は昨年後半から増え始め、この3週間は毎週200人以上が報告されている。都道府県別では今月10日現在、東京が755人、神奈川205人、千葉139人、埼玉132人など、首都圏を中心に流行の兆しをみせており、同省は「推定で約3・9万人の患者が出た2004年以来の流行になる恐れもある」としている。
子どもの病気というイメージが強い風疹だが、現在の流行の中心は大人の男性。患者の約8割が男性で、そのうち9割近くを20-40歳代が占める。1977年に女子中学生を対象とした定期予防接種が始まったが、男子が対象になったのは10年以上も後で、その間に接種を受けなかった男性が多いためだという。
特に注意が必要なのが妊娠中の女性だ。妊婦が感染すると、胎児に心疾患や白内障、難聴などの重い障害が出る「先天性風疹症候群」(CRS)を引き起こすことがあり、今年もすでに1例確認されているという。
このため、厚労省は1月末と2月末、妊婦の夫にワクチン接種を呼びかけるよう自治体に通知。千葉県や川崎市が独自のポスターやチラシを作って医療機関や商工会議所に配布するなどしているが、思うように効果は上がっていない。
2013年3月21日 提供:読売新聞
風疹患者2千人超 東海や九州にも拡大 大流行の恐れも
国立感染症研究所は26日、今年の全国の風疹患者数が21日までに累計2千人を超えたと発表した。全数報告の対象になった2008年以降で最多だった昨年1年間の2353人に迫る勢いで流行が拡大している。妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんに心臓疾患や難聴といった「先天性風疹症候群(CRS)」が起こる可能性があるため、専門家は妊娠前のワクチン接種などを呼び掛けている。
同研究所によると、21日現在で患者は2021人。首都圏や大阪、兵庫で目立って多く、東海や九州などほかの地域にも広がり始めた。推計で約3万9千人の患者が出た04年以来の大流行となる恐れがあり、厚生労働省は「4月に向けて人の移動も多くなる。一部の地域の問題と考えずに注意してほしい」としている。
今回の流行では患者の4分の3が男性。年代別では20代〜40代男性と20代女性が多い。ワクチンの接種機会がなかったことが背景にあるとみられ、家庭や職場などで感染を広げてしまうことが懸念されている。今年に入って、ワクチン接種歴のない母親からのCRSの報告が2例あるほか、脳炎を合併した25歳男性の重症例もあった。
日本産婦人科医会幹事で横浜市立大の奥田美加(おくだ・みか)准教授は「妊婦はワクチン接種を受けられない。周りの人も、うつさないためにも、自分は関係ないと思わずに受けてほしい。過去の接種歴が分からない人が受けても問題ない」と話している。
風疹ワクチンは現在、男女とも1歳と小学校入学前の計2回が予防接種法に基づく定期接種になっている。接種機会がなかった人のために、今月末までは、中学1年と高校3年が無料で接種できる。
※風疹
風疹ウイルスによる感染症で、感染者のせきやくしゃみに含まれるしぶきを吸い込んでうつる。2〜3週間の潜伏期間後、発熱や、全身の淡い発疹、耳の後ろなどのリンパ節の腫れが出現する。まれに急性脳炎などの重い合併症が起きるが、普通は3日程度で熱も発疹も治り、三日ばしかとも呼ばれる。例年、春先にはやり始め、ピークは5、6月。妊娠初期の感染で新生児に心臓疾患や難聴、白内障などの症状が出る「先天性風疹症候群(CRS)」が高い割合で発生する。