美しい姿勢:肩甲骨から
背筋がすっと伸びている人は美しい。姿勢がいいと、筋肉が正しく使われ、体も引き締まる。そのポイントは、肩甲骨にあった。
「肩甲骨は、呼吸、姿勢、ストレス、肩こりなど多くの症状に関係しています」。こう話すのは、整形外科医で、国立スポーツ科学センター研究員の中村格子(かくこ)さん。肩甲骨は、鎖骨とつながっているだけで、浮いているような状態だ。このため、外側に開いたり内側に閉じたり、上下に移動したりと自由に動き、肩と腕をつないでいる。
●前かがみが悪影響
ところが、この「自由な動き」ができない人が増えている。現代は、携帯電話やパソコンの使用などで前かがみの姿勢になることが多く、肩が前に来て、左右の肩甲骨の間が開きやすいからだ。「肩甲骨が動けるのは周りの筋肉のおかげ。だが、前かがみの姿勢が多いと、背中側の筋肉が使われず、肩甲骨の動きが小さくなり、さびついたようになってしまう」という。
また、肩が前にくると、バランスをとるために骨盤が後ろに傾いたり、逆に反りすぎたりして、正しい姿勢が保てない。「自然と呼吸も浅くなり、精神的にも落ち着かなくなります。また、背骨の胸椎(きょうつい)も丸まり、猫背になりやすい」と中村先生。
大手医療雑貨メーカーのピップ(大阪市)が昨年12月に行った、20〜40代の女性210人の調査では、慢性肩こりのある女性のうち、「両ひじを顔の前でつけて上げられない」と答えた人は、肩こりがない女性の約2・5倍にも上った。肩甲骨の可動域が狭くなっていると考えられる。
●可動域保つために
可動域を保つために重要なのは、筋肉をつけること。運動を思い浮かべがちだが、「筋肉の血行をよくすると、効果を実感しやすい」という。お風呂につかったり、使い捨てカイロや、首にかけるホットパックもよい。姿勢も大切で、パソコンのデスクトップは目線より下▽歩くときは体の前側ではなく後ろ側に腕を振る――などに気をつけたい。
中村さんに、手軽にできる運動を教えてもらった。まずは、頭の後ろで手を組んで、ひじを近づけたり開いたりする=写真(1)(2)。もう一つは、手の平を上に向け斜め後ろに伸ばして左右の肩甲骨を引き寄せ、次に手を体の前で交差させ、肩甲骨の間を広げる動きだ=写真(3)(4)。いずれも、胸が広がるときは息を吸い、縮めるときは吐いて、呼吸しながら行う。2〜3回行ってリフレッシュした気分になれば十分だ。「やりすぎると逆効果。朝起きたときや仕事の合間など、ふと時間が空いたときにやってみてください」
●下着で血行改善も
下着で、肩甲骨に注目した製品も登場している。
磁気が血管を広げ、肩こりを和らげるピップの「ピップエレキバン」。同じ仕組みの磁石をブラジャーのストラップに付け、血行改善で肩甲骨周りを温める「磁気のブラストラップ」(2000円前後)が2日、バラエティーショップやインターネットなどで発売される。
ワコールは、60代以上の女性向けのブランド「グラッピー」で、肩甲骨周りの筋肉に圧力をかけて動きやすくする「動く姿かろやかシャツ」(7350円〜)を出している。トリンプのブラジャー、「肩甲骨のきもち」(5250円〜)はカップの横のボーンが肋骨(ろっこつ)を支え、上にある肩甲骨の動きをスムーズにするという。【榊真理子】
美しいフォーム身に着けて ウオーキング みんなの○○
みんなの○○:ウオーキング/1 美しいフォーム身に着けて
本日スタートした「みんなの○○」。「これから始めてみたい」テーマを毎週一つ選び、その道の達人やプロのアドバイスを聞く。初回のテーマは「ウオーキング」だ。ぽかぽか陽気が外出を誘うこの季節。「運動した方がいいってことは分かっちゃいるけど……」という人にこそぴったりのスポーツだ。
「生活の基本」でもあるウオーキング。主に下半身全体を使う有酸素運動であり、足腰の強化や体脂肪の燃焼、美肌やストレス解消にもつながるということで、年々、人気が高まっている。
「最初は散歩からでいいんです」。こう話すのは、日本ウオーキング協会(本部・東京都文京区)の健康ウオーキング指導士、西田富美子さん。まずは外に出る。次に家の周りを1周。買い物には徒歩で。駐車は少し遠い所に止める。通勤時に1駅歩く――というように、少しずつ取り入れると良いという。
初心者にチャレンジしてほしいのは15分。約1500歩分に相当する。体重70キロの男性で50〜70キロカロリー、同60キロの女性なら45〜60キロカロリー消費するという。
厚生労働省が定めた国民の健康の指針「健康日本21(第2次)」でも、1日あたりの歩数を1500歩増加させることをうたった。1年続ければ、食事の量を変えなくても2〜3・5キロの減量が可能。生活習慣病などのリスクを減らし、血圧を下げる効果も期待できる。体脂肪の燃焼や減量を目指すなら、30分〜1時間は歩きたい。
速度は、会話ができて、気持ち良いと感じる程度。心臓がドキドキしてくると有酸素運動をしている証拠だ。体が慣れたら速足で。坂道や階段を選ぶと筋力向上に効果的だ。
効果的なフォームを西田さんに教わった。まず、姿勢を良くする。トボトボ歩きは歩幅を狭くし、かえって長く歩けなくなる。肩の力を抜いて腕をバランス良く振って。かかとから着地し、つま先に重心を移動させながらスムーズに足を動かすと、歩幅が広がって運動効果もアップする。
同協会は各地にウオーキング指導員を派遣し、講義や実技指導を行っている。各地方組織でも教室を行っているので、より高度な技術を身に着けることも可能だ。【山崎明子】
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◇ウオーキングの美しいフォーム
(1)目線は景色を楽しむ高さ
(2)体の中心を通る軸をまっすぐ保つように意識する
(3)丹田(たんでん)(へその下)に程よい緊張感を付けて
(4)膝とつま先が正面を向くように着地
(5)かかと→小指→親指の順に重心が移っていくように
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ストレッチで体をほぐそう ウオーキング みんなの○○
みんなの○○:ウオーキング/2 ストレッチで体をほぐそう
フォームも学んだし、さっそく歩きだそう――と考えているあなた、ちょっと待って。運動前の体は「休息状態」。準備運動をしてから歩き始めよう。日本ウオーキング協会(本部・東京都文京区)の健康ウオーキング指導士、西田富美子さんは「関節の可動域が広がるので、けがの防止と効果アップにつながります」とアドバイスする。
まずは体全体の筋肉をほぐすため、大きく手を振って足踏み。次に、背伸び。かかとを地面につけたまま、手の指を組んで裏返し、頭上に伸ばして体を引き上げる。腕を左右に倒して体側もググッと。足を前後に開き前膝を曲げ、ゆっくり腰を落として股関節を心地よく伸ばそう。
歩く時は、両手が空き、体の左右のバランスが均等になると疲れ知らず。荷物はデイパックなどに入れよう。
気温が上がるこれからの季節、飲み物の携行も忘れずに。15分程度の歩行なら水やお茶で十分だが、大量に汗をかきそうならミネラル分の補給も必要だ。スポーツドリンクはお勧めだが、ダイエットを目指すなら糖分の取り過ぎに注意を。運動量と発汗量に合わせて飲み物を選びたい。
長距離を歩く自信がつくと、次の楽しみはコース選び。街の中も刺激的だが、自然の中を歩くのも、風のそよぎや草の匂いに癒やされる。住宅地図メーカーのゼンリンは「美しい日本の歩きたくなるみち500選マップガイド」をエリアごとに発売中。こうした参考書を片手に歩くのもいい。
また、全国各地にウオーキング関連の団体や愛好会があり、数キロから50キロを1〜数日かけて踏破するイベントを企画している。レジャーや仲間作りを兼ねて参加する人も多い。「讃岐うどんつるつるツーデーウオーク」(香川県坂出市、4月6〜7日)、「野沢温泉菜の花パノラママーチ」(長野県野沢温泉村役場前発着、5月11〜12日)などの地域色豊かなイベント、「ウオーキングフェスタ東京」(東京都・小金井公園発着、5月3〜4日)など、全国から愛好家が集まる大会もあるので参加してみよう。【山崎明子】