風疹 九州・山口・沖縄でも急増、前年同期比24倍
風疹が全国的な流行の兆しを見せる中、九州・山口・沖縄でも成人男性を中心に患者が急増している。今年の患者数は3月31日時点で計142人と、前年同期比で約24倍に達した。注意しなければならないのは、妊婦が感染して胎児に重い障害が出るケース。国は、妊婦の夫らに予防接種を受けるよう呼びかけるが、九州・山口・沖縄では成人への公費助成がなく、接種は進んでいない。
国立感染症研究所(東京)によると、患者は昨年後半から東京都や神奈川県、大阪府など関東、関西を中心に増え始めた。今年に入って全国の患者数は3月24日時点で2418人となり、昨年の年間患者数2353人を上回った。九州・山口・沖縄で最も多いのは鹿児島県で、福岡、熊本、大分県と続く。
厚生労働省によると、患者の7割以上が男性で、うち20-40歳代が8割を占める。1977年から95年まで定期予防接種は女子中学生のみに行われた。この間に接種を受けなかった男性の感染が疑われており、国の2011年の調査では、20-40歳代の男性の15%が、抗体を持っていなかった。
成人がかかっても1週間程度安静にすれば回復するケースがほとんどだ。しかし妊婦が感染すると、胎児に難聴や心疾患、緑内障などの障害が出る「先天性風疹症候群」(CRS)を引き起こすことがある。今年は2例報告された。
国は、妊婦の夫らを中心に予防接種を受けるよう呼びかけるポスターを医療機関や市町村に配布するなど啓発を続けるが、なかなか浸透しない。
成人の予防接種では、はしかと一緒になったMRワクチンで1万円程度、風疹単独のワクチンは7000円程度かかる。費用を助成している自治体は東京都など一部だけで、九州・山口・沖縄各県では全額自己負担だ。「重篤にならない」と考え、接種を受けようとしない男性は多いとみられる。
横浜市立大付属病院の平原史樹院長(産婦人科)は「感染は当面広がりそうだ。公費助成の拡大も必要だが、危機感の薄い人に接種を受けてもらうため、企業などには社員に接種を促すよう積極的な取り組みを求めたい」と話している。
SFTS ダニの感染症で成人女性が死亡 鹿児島では初
鹿児島県は8日、マダニが媒介する新種の感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」に県内の成人女性が感染し、今月初めに死亡していたと発表した。同県内で感染が確認されたのは初めて。県によると、感染例は全国で10人目、死亡が確認されたのは6人目となる。
県健康増進課によると、この女性は発熱の症状が出たため、先月末に病院で調べた。検査の結果、SFTSと認められた。発症するまで1カ月以内の海外渡航歴はなかった。県は「個人の特定につながる恐れがある」として、年代や居住地域などを公表していない。【津島史人】