慢性副鼻腔炎、長期抗菌薬の是非
 

 副鼻腔炎に抗菌薬の長期投与をするか否か。医師によってどう判断するかは異なってくる。ある医師は長期投与する一方で、別の医師は長期投与に疑問を持って避けることもある。どちらの対応を好ましいと考えるか。

必要 アレルギー抑制作用と抗菌作用

 慢性副鼻腔炎に対する抗菌薬の長期投与の中でも、マクロライドの長期投与は日本で始まった治療として全国に広まっていった。臨床研究で効果が証明された「エビデンスのある治療」として受け入れられてきた経緯がある。

1998年には、名古屋市立大学耳鼻咽喉科の羽柴基之氏らが、「慢性副鼻腔炎に対するマクロライドの長期投与ガイドライン(試案)」を発表。実施方法を記載しており、成人であれば、エリスロマイシン400-600mg、クラリスロマイシン200-400mg、ロキシスロマイシン150-300mg、小児であればエリスロマイシン8-12mg/kg、クラリスロマイシン4-8mg/kgを投与すると解説。投与期間は3カ月の投与で無効であれば他治療を検討し、有効である場合も3-6カ月をめどに切り上げると示していた。マクロライドの長期投与を実践する医師は、抗菌作用よりも、好中球浸潤や粘液分泌の抑制を期待して処方している。アレルギーを抑制する手段として捉えられている面があるわけだ。

感染制御も大切な治療であり、ペニシリン系、セフェム系、ニューキノロン系の抗菌薬がよく使われている。改善までに時間がかかるために、投与期間も長くなる傾向が出てくる。

回避 効果なしの報告も、耐性菌にも懸念

 ただし、慢性副鼻腔炎への抗菌薬の長期投与に疑問を投げかける臨床研究は少なくない。オランダの無作為化比較試験によると、低用量のアジスロマイシンを3カ月以上投与しても、慢性副鼻腔炎に対するプラセボを超える有効性は確認されなかった(Allergy. 2011;66:1457-68.)。ほかの海外の報告でも抗菌薬の長期投与に有効性がある可能性を指摘しつつも、エビデンスは十分ではないと指摘。課題が残ると解説している(Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg. 2013;21:61-8.、Rhinology. 2012;50:45-55.)。

長期投与に伴う耐性菌の発生を危惧する声も根強い。とりわけマクロライドは、細菌だけではなく、マイコプラズマやリケッチャにも有効性を示すために長期処方をできるだけ避けようと訴える医師は多い。スペクトラムのより狭い抗菌薬を使うならば優先的に使うべきだという声もある。もちろんマクロライドに限らず、長期処方への反対は強い。慢性副鼻腔炎に対して抗菌薬を避けて、抗アレルギー薬や粘液溶解薬を使ったり、鼻洗浄を行ったりする動きも活発。手術療法といった新規の治療も関心を集めており、抗菌薬とは異なる治療の道が広がっている点も重要だろう。

2013年5月29日 提供:星良孝(m3.com編集部)