神経のもととなる神経幹細胞に青い光を当てることで増殖を促し、神経細胞になるよう誘導もできる技術を、京都大やお茶の水女子大などのチームがマウスの胎児の細胞を使って開発し、31日付の米科学誌サイエンス電子版で発表した。アルツハイマー病やうつ病のような神経細胞が関連する病気の治療や、脳神経組織の再生医療に応用できる可能性があるという。
チームは、増殖している胎児マウスの神経幹細胞で働いているタンパク質を観察。3種類のタンパク質がそれぞれの周期で、作られては分解されるのを繰り返していることが分かった。さらに、神経幹細胞から神経細胞に分化する過程を見ると、3種類のタンパク質の一つ「Ascl1(エーエスシーエルワン)」が作られ続け蓄積していることを突き止めた。
そこで、胎児マウスの神経幹細胞にウイルスで特殊な遺伝子を導入し、青色光が当たるとAscl1が働くようにした。光をAscl1の周期に合わせて3時間に1回照射するのを繰り返すと、神経幹細胞が増殖。30分に1回の短い周期で当て続けると多くの神経幹細胞が神経細胞になった。
京都大の影山龍一郎(かげやま・りょういちろう)教授(分子生物学)は「造血や消化管など、ほかの幹細胞の増殖や分化でも同様の仕組みが働いているものがあると考えられる」と話した。