塩にかんきつ類プラス
リモネンが血流高める
寒い日が続くと体が冷えてつらいもの。湯船にゆっくりつかれば冷えた体が温まってくる。入浴剤を手作りし、バスタイムを楽しむ人も増えている。中でも塩を使うバスソルトは手軽に作ることができ、体がぽかぽかして湯冷めしにくい効果を期待できそうだ。
若い女性を中心に入浴剤を手作りする人が増えている。身近な素材が使えて、お金があまりかからない点が受けているようだ。手作り入浴剤の著書を持つ小幡有樹子さんは「その日の気分によって入浴剤を作って、バスタイムを楽しむ人が増えている」と話す。
手作り入浴剤は、台所にある材料を使って手軽にできるものがほとんどだが、基本とする成分によっていくつかの種類がある。塩を基本に作るのがバスソルト、オリーブ油やグレープシード油を使うのがバスオイル。このほかにも重曹(ベーキングパウダー)を基本にするものや、日本酒やワインなどのアルコールを入れる方法もある。
中でもバスソルトは手軽で、しかも健康効果も期待できる。粗塩や自然塩を風呂に加えるだけでよい。このとき、グレープフルーツやオレンジ、ユズやレモンといったかんきつ類の果皮を使って、香りを成分を塩に混ぜ込むと、より本格的になる。
昔から塩分の溶け込んだ温泉(塩化物泉)は、熱の湯とも呼ばれ、体がよく温まり、湯冷めしにくいといわれてきた。実際、家庭の風呂に塩を入れるだけで体がより温まることが知られている。
30人の男女を対象にした実験によれば、15グラムの塩を入れた風呂に5分入浴して、その10分後の皮膚の温度を測ると、塩を入れていないサラ湯に同じ時間入ったときより高かった。しかも2時間後まで皮膚の表面温度が下がりにくかった(グラフ参照)。
入浴や温泉の効用に詳しい北海道大学の阿岸祐幸・名誉教授は、「ひとつかみの塩を風呂にいれるだけで、体がよく温まり、湯冷めしにくくなる」と語る。
塩を入れるとなぜ体が温まるのかはよく分かってないが、「塩が皮膚表面にあるたんぱく質や脂肪と結合して"錯塩(さくえん)"と呼ばれる皮膜を肌の表面に作る。この膜が、体から熱が放散するのを防いでいるという説が有力だ」(阿岸名誉教授)。
さらに一工夫して、かんきつ類の香り成分を塩と一緒に風呂に加えると、体を温める効果がより期待できる。体が冷えがちな冬にお薦めのバスソルトだ。
冬至に楽しむ風呂としてユズ湯が知られているが、ユズなどのかんきつ類にはリモネンという香り成分が含まれており、血流を高める働きがある。
中でもリモネンを多く含み、手軽なのがグレープフルーツだ。アロマテラピー(芳香療法)でもグレープフルーツは精油として使う。アロマテラピーに詳しいターミナル整形外科(札幌市)の山崎潤院長は、「グレープフルーツの精油は血流をよくする作用が非常に大きい」と話す。
山崎院長が約20人の男女にグレープフルーツの精油を入れた湯と、入れていないサラ湯で10分間、足浴をする実験をしたところ、グレープフルーツでは血流が約3倍になった。しかも「レモンなど他のかんきつ類に比べても血流改善効果が大きかった」という。
グレープフルーツは市販のもので構わない。赤い果肉の「ルビー」でもよい。
一個分の皮だけをおろし金ですってふきんに包んで搾る。その汁を塩によく混ぜて、風呂の中に溶かす。事前に塩と混ぜておくのは、精油成分が湯によく溶け込むようにするためだ。有効成分のリモネンは揮発しやすいので、入浴の直前にバスソルトを作って風呂に入れるとよい。
皮には防かび剤がついていることが多いので、事前に塩で表面をもんだり、タワシでこすって洗ったりしてから使うと安心だ。
グレープフルーツの精油(10ミリリットル入りで2千円前後で購入できる)を使う場合は、6−10滴を塩に混ぜてから風呂に溶かそう。
なお、グレープフルーツの香り成分に対して、まれにアレルギー反応が出ることがある。「精油や搾り汁を二の腕の内側などに少し塗り、かぶれないことを確かめてから試すとよい」(山崎院長)
(『日経ヘルス』編集部)
【材料】(1回分)
自然塩か粗塩4分の1カップ、グレープフルーツの皮1個分(もしくはグレープフルーツの精油6−10滴)
【作り方】
? グレープフルーツの皮をおろし金ですりおろす
? ふきんなどで包んで搾る
? 塩とグレープフルーツの搾り汁(精油)をよく混ぜる
※皮を細かく刻んで、塩と混ぜてもよい。その場合、ガーゼに包んで風呂に入れる
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