血中総コレステロール値の高い人が医者に行くと「肉や卵、バターはコレステロールが多いからとってはいけない」とよくいわれる。だが、そんなことをしたら、食べる楽しみを失いストレスになって、かえって病気が悪化しかねない。

日本人は何かとしうと一つのものをとらえて良否を判断する。しかし、食卓には血中総コレステロール値を下げる働きのある食品もたくさんあるのだから、この種のものを一緒にとればコレステロールの心配はしなくて済む。

こんな実験がある。国立健康・栄養研究所にいた故・鈴木慎次郎さんが、人を対象に一週間にわたってバターを一日六十グラムと鈴木慎次郎さんが、人を対象に一週間にわたってバターを一日六十グラムとってもらったところ、血中総コレステロール値は十四・二%上がった。次に生シイタケを同じように九十グラムとってもらつたら、今度は〇・四%下がった。そこでバターとシイタケを一緒にとってもらったらどうなったか。驚くべきことに三・七%も下がったのである。

中国には相対立するものを二つ組み合わせてバランスをとる陰陽説的発送がある。この考え方からすると、血中総コレステロール値を上げるようなものをとるときには、一緒に下げる働きのものをとれば良いということになる。魚類、大豆やその加工品、野菜や海藻、キノコ類、油の多いクルミのような種実類、植物油は「下げる」派だ。

五百人に一人ぐらいいる、家族性高コレステロール血症という体質の人は例外として、そうでない人は肉や卵をとる時、大いに血中総コレステロール値を下げるような食品を一緒にとるように心がければ良い。
(新宿医院院長 新居 裕久)

2004.10.9 日本経済新聞