中風は年40を過ぎて

脳卒中は死につながる怖い病気。がん、心臓病と並び日本人の3大死因だ。毎年13万人以上が亡くなっている。助かってもまひや言語障害などの後遺症がのこることが多い。日本人の寝たきりの最も多い原因でもある。

痴ほう症状が表れることもある。
うまく飲み込めなくなり食べたものが気管から肺に入り肺炎を起こすことも多い。食べられなくなると鼻からチューブを入れたりして流動食をとらなければならなくなる。

予防の第1は高血圧を治すことだ。最近は簡単に使用できる計測器があるので、常備したい。高い状態が続く場合には医師と相談し、必要なら降圧剤を服用する。

不整脈も脳卒中の引き金になることがある。心房細動と呼ばれる不整脈は危険で、治療が必要だ。糖尿病の場合も危険が高まる。肥満は高血圧や糖尿病の原因だ。適切な体重を保つように努めよう。

喫煙は禁物。たばこを吸っている人は禁煙すること。少量の酒は善玉のHDLコレステロールを増加させ、また血管を広げて血液の循環を良くするので好ましいが、日本酒を1合以上を毎日飲んでいると、血圧上昇につながり、脳卒中の危険を高めてしまう。

不健康な食生活も避けよう。塩分のとりすぎは血圧を上げ、脂肪分の過剰摂取は血清脂質を上げて脳卒中の要因になる。日本人の塩分摂取量はまだまだ多い。高血圧を予防し、脳卒中にならないようにするためには塩分は1日10グラム以下にしたい。ラーメンを食べてスープまで飲み干すと、それだけで7.5グラムの塩分を摂取することになる。

脱水にも気をつけてほしい。血液が濃くなれば血管が詰まりやすくなる。汗をかいたときには必ず水分を補給する。運動不足、過労、ストレスも避けたい。

『養生訓』には「中風は(中略)肥白にして気すくなき人、年40を過て気衰する時、七情のなやみ、酒食のやぶれによつて、此病生ず」と書いている。今も昔も同じ。日常生活に注意して脳卒中を予防し、健康長寿を目指そう。
(国立長寿医療センター疫学研究部長  下方 浩史)

2004.10.31 日本経済新聞