病気ではないが健康ともいえない中間の症状「未病(みびょう)」に専門家が注目している。体調が思わしくないのに健康診断の結果が正常だから大丈夫と考えている人は少なくない。未病は健康を損なう兆候で、重病が潜んでいる恐れもある。生活習慣を改める良いきっかけと考えよう。 |
女性のAさん(63)はふくらはぎがけいれんする「こむら返り」の症状に悩まされていた。けいれんは30分程度経過するとだいたい治まるので、昼間の疲れがたまったものだと考えた。ところが、毎晩続いた。
東京逓信病院(東京・千代田)で精密検査を受けたら、脳に腫瘍が見つかった。Aさんを診察した一戸能麿医師は「脳の下垂体に腫瘍ができたので、甲状腺ホルモンが低下し、こむら返りが起きた」と解説する。
幸いAさんの腫瘍は良性で、手術も成功した。一戸医師はAさんのケースを説明しながら「軽い症状でも怖い病気が潜んでいることがある」と注意を呼びかける。
しびれやだるさがあるのに健康診断では異常が見つからない人や、自覚症状はないが健康診断の血圧やコレステロール値は正常ではない人がいる。「思い当たる人は未病といえる」と日本未病システム学会常任理事で博慈会老人病研究所(東京・足立)の福生吉裕所長は指摘する。
福生所長は約10年前から未病管理の重要性を唱えている。検査値などではわずかな異常が認められるものの、病気扱いするのは行き過ぎと考えられる人が少なくないことから、こうした症状を、健康と病気の中間にある「未病」と定義している。
福生所長によると、未病の人は多い。ある高齢者はコンピューター断層撮影装置(CT)で頭部を調べたところ、血管の所々が詰まっていた。急所をはずれているので本人はいたって元気だが、脳卒中になりやすいため注意が必要だという。
別の高齢者は血糖値が高かった。本人は「果物の食べ過ぎが原因」と考えていたという。実際は、体の免疫機構が自分のすい臓を異物と勘違いして攻撃する「自己免疫性すい炎」と判明した。
また60代の別の女性は「目が回る」「心臓がどきどきする」と、自分の症状について一貫性のない説明を繰り返していたので、心の病気ではないかと思われていた。ところが、耳の奥の脳に腫瘍が見つかった。
国際医療福祉大学熱海病院(静岡県熱海市)の都島基夫教授(慶応義塾大学医学部客員教授)も未病に関心を持ってほしいと説いている。自覚症状はないが健康診断の結果が正常ではない人などに対しては、「未病は病気に進展させてはいけない状態。健康に戻る好機でもある」と説明している。
未病とかかわりの深い心臓や血管の働きを紹介しながら、「今の生活が続けば病気になる」「栄養バランスの良い食事をとることに気をつけ、適度な運動を続ければ、もとの健康な状態に戻る」と指導している。
ただ都島教授は、明らかに体調が悪かったり、症状が重くなってきたりしているのなら、病院へすぐに行って医師の診察を受けることが欠かせないという。同教授は専門外来を立ち上げる計画を温めている。
未病を広くとらえると、高血圧や糖尿病、肥満なども含まれるという。それではどのように付き合えばよいのだろうか。
『未病クリニック』の著書がある日本医師会の橋本信也常任理事は「おや、めまいかな、あれ、おかしいな、と感じたら未病を疑ってほしい」と訴える。
内科医の橋本常任理事は、病気の兆候を見逃して重病になった患者を数多く診てきた。そうした経験から「自分が病気になっていないかどうか常に注意を払い、健康でいられるように心がけることが重要」と説く。肝に銘じておきたい。
全身がむくんだら… |
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尿に大量のたんぱく質が出るネフローゼ症候群、腎炎、心不全、肝硬変、がん、重症感染症、甲状腺機能低下 |
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(注)『未病クリニック』をもとに作成
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◆未病を詳しく知りたいなら
日本未病システム学会 http://www.mibyou.gr.jp/
◆未病の対処法を紹介
『未病クリニック』(橋本信也編集、中央法規出版発行) |
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