保温効果、心も癒やす
食物繊維たっぷり、血行促進

そろそろ温かい飲み物が恋しい季節。そんなときにうってつけなのがココアだ。熱帯で育ったカカオ豆が原料のこの飲料、味がまろやかで体が温まると子供や女性にファンが多い。現在は機能性などを売り物にした商品が相次いでお目見えし、第二次ココアブームの様相を呈している。

体が冷えたとき、お湯に溶かしたココアを飲むと、確かに体が温まる。お湯を飲んでも体は温かくなるが、長続きはしない。

ミネラルも多い
これを調べた実験がある。森永製菓研究所が都内のクリニックと共同で行ったものだ。冷え性に悩む12人の女性が「ホットコーヒー」「ホットココア」「温かいお茶」「お湯」の4種類を100ミリリットルずつ、70−75度にして飲んだ。手の甲の温度を測ると、ココアを飲んだときが最も高くなった。また、1時間後まで温度上昇効果が維持されたのもココアだけだった。

これは、含まれるポリフェノールが血液をサラサラにして、末しょうまで血液循環を良くするためと考えられている。

現在のココアの原型とされる、カカオ豆をすりつぶした飲み物は紀元前に中南米で誕生し、王族の精力剤や不老不死の薬として使われたといわれる。これがヨーロッパに渡り、脱脂技術が確立されて、まろやかな味になった。

ポリフェノール以外にも食物繊維や銅、亜鉛といったミネラルが多く含まれている。これらが、いろいろな健康効果をもたらす。

まず便通が良くなる。これを実証したのは、埼玉医科大学総合医療センター高度救命救急センターの間藤卓講師。「入院患者の栄養補給に使ったところ、飲み始めて、1、2週間で排便が規則正しくなり、便臭も減少した。食物繊維などの影響ではないか」と話す。

さらに同講師は「おむつをしている患者のかぶれが少なく、傷の治りも早まるようだ」と指摘する。実際、マウスを使った実験で、ココアをえさに混ぜて与えると、肌細胞の増殖が活発になることがわかった。

ほかにもリラックス効果や、胃かいようの原因になるピロリ菌の活動を抑えるなどの効果が報告されている。

整腸作用も期待
こうした中、ポリフェノールや食物繊維を増量した「機能性ココア」が相次いで登場。通常、1杯(120ミリリットル)に含まれるポリフェノール量は1−1.2グラム程度だが、それらが約2倍含まれるものもある。

黒豆や黒砂糖など、健康にいいとされる素材を加えた商品もお目見え。また、今月ココアで初めて特定保健用食品として厚生労働省の許可を受けた商品も発売された。片岡物産の「バンホーテン ミルクココア ファイバープラス」がそれ。整腸効果が高いとされる水溶性食物繊維を加えている。

ココアの飲み方は、お湯か温めた牛乳で割るのが一般的。ただし、粉をカップに入れて一気に注ぐと、ダマになりやすい。そこで、「まず少量のお湯か水を加え、練ってペースト状にしてからお湯や牛乳を注ぐと、ダマになりにくい。無糖タイプに砂糖を入れて作るときは、練る前にココアと砂糖をよくかき混ぜるといい」と料理研究家の浜内千波さん。隠し味として塩をひとつまみ入れると、味に深みが出る。

より健康効果を高める方法もある。例えば、温めた豆乳で割る"豆乳ココア"だ。大豆から作られる豆乳は、生活習慣病や骨粗しょう症予防などが期待できるヘルシー飲料。割って飲むときは、飲みやすい調整豆乳がお薦め。ヨーグルトのトッピングとしてココアを振り掛けるのもいい。整腸効果がより高まることが期待できるからだ。

ただ、甘くておいしいからと、つい砂糖を多く入れがちだが、高カロリー飲料になるのでご注意を。
(『日経ヘルス』編集部)

ココアの5大成分と期待される効果

成分
期待される効果
ココアポリフェノール 苦み成分の一つ。血液をサラサラにして、体の隅々まで流す。冷え性を改善
テオプロミン 苦み成分の一つ。ココア特有の香りとともに、ストレスを軽減。
食物繊維 不溶性の食物繊維のリグニンが多い。便通を改善し、便臭を低減
ミネラル 銅、亜鉛、カリウム、マグネシウムなどのミネラルを含む。自律神経を整える
遊離脂肪酸 カカオの脂肪分。胃かいようの原因になるピロリ菌を抑制する。

2004.11.20 日本経済新聞