ゆっくり腹筋運動
おなかの脂肪、万病のもと

中年のみなさん、おなかに手をあてて、ため息をついていませんか?特に飲食する機会が多いこの時期、一層出っ腹になっているのでは? 腹部の脂肪は生活習慣病になるリスクを高めます。新年で気分一新、今年こそおなかをへこます運動に取り組んでみてはいかがでしょう。

運動量や食事量が変わったと思わないのに、30歳を過ぎたころから太り始める人は少なくない。脂肪がおなか周りに集まり、昔のパンツがはけなくなって次々に買い替えるはめに。やせ形で20代まで太ることとは無縁だったような人でも。なぜ?

「筋肉の量が減り、消費するエネルギー量が下がることが一因」。疑問に答えてくれたのは国立健康栄養・研究所の活動調査研究室長の宮地元彦さんだ。

加齢で筋肉減る
人が体の機能を維持するのに使うエネルギーの50%は、全く動かなくても筋肉が消費する。だが筋肉の量は使わないことや加齢で減る。加齢で筋肉量がへることをサルコペニア(筋肉減弱症)といい、「年をとると、この症状がさらに進む」(宮地室長)。つまり、食事量が変わらなくても、年をとると必要なエネルギー量は減るから、余った分が脂肪となって体内にたまる。これが中年太りの真相だ。

だから脂肪がたまるのを防ぐには?食べる量を減らす?運動をして消費エネルギーを増やす?筋肉トレーニングで筋肉量を増やして基礎的な消費エネルギーを増やす――の3つがある。??の効果がある運動について、日本エアロビックフィットネス協会認定インストラクターで、おなかをへこます運動を提唱している中村勝美さんに聞いた。

きつい腹筋運動を予想していたら、薦められたのは初歩的な筋トレだった。「激しい運動をしても、実は鍛えるべき筋肉を動かしていないことが多い」と中村さん。上体を上げる腹筋運動も腕や肩、首の力で上げ、腹筋を使っていない人がほとんどだ。

また、「やる気満々の人ほど長く続かない」という教訓も。細く長く続けてこそ効果があるのに、最初からきつい運動で結果を求めすぎると逆に続かなくなる。

初歩的な筋トレは上腹部、下腹部、脇腹部の筋肉鍛錬に効果的。いずれも3秒かけてポイントまで動かし、また3秒かけて元に戻す。1セット10回を基本にして繰り返す。

1日15分で効果
ただし、鍛えたい筋肉がしっかり収縮、伸長していることを意識してゆっくり動かすのが大切。「行って帰って、と双方向の動作をするので、1日15分程度でも十分効果がある」と中村さん。特に脇腹部は普段使わない筋肉だけに、ここを鍛えれば筋肉量が増え、エネルギー消費量を高めるのにいいという。

健康栄養研の宮地室長の調査では、エアロビクスのインストラクターは水泳の選手・指導者よりも腹部脂肪率が低く、「水泳より筋トレの要素がある運動の方が腹部の脂肪はつきにくい」という。

腹部に脂肪がたまると、善玉ホルモンは出にくく悪玉は出やすくなり、動脈硬化や糖尿病の危険性が増す。手足に脂肪がある人より、おなかに脂肪がある人の方が生活習慣病になりやすいという調査もある。おなかの脂肪は万病のもと。今年こそ退治しよう。

おなかをへこますトレーニング

基本姿勢
背と腰を壁につけ両足を腰幅にして立ち、手をおへその上と下に置く
上腹部
意気を吐きながら上体を丸め、上の手の小指をしたの手の親指に近づけて保持。背骨で壁を押す感じ。息を吸いながら戻す
脇腹部(伸縮)
壁を背にして立ち、両を頭の後ろにおいたまま、息を吐きながら真横に倒して保持。息を吸いながら戻す。逆方向も
下腹部
息を吐きながら骨盤を後傾することで下の手の親指を上の手の小指に近づけて保持。腰を壁に押し付ける感じ。息を吸いながら戻す
脇腹部(捻転)
壁を背にして立ち、片手は頭の後ろに、もう一方の手は腰におき、息を吐きながら頭においた手のひじを反対側の骨盤に近づけていき保持。息を吸いながら戻す。手をかえて逆方向も。
2005.1.15 日本経済新聞